奸悪かんあく)” の例文
旧字:奸惡
ことに、既成きせい政治家の張りめぐらした奸悪かんあくな組織や習慣を一つ一つ破砕はさいして行くことは、子路に、今まで知らなかった一種の生甲斐いきがいを感じさせる。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それから若松屋惣七の両替ならびに仲介業なかだちぎょうをつぶそうとした奸悪かんあくな手段にまで言及したもので、完膚かんぷなきまでに磯五をやっつけたものであった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼のような乱世の奸悪かんあくを、きょうまで生かしておいたのは、信長の方に、それを利用する必要と寛容があったからである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老師と数馬の必死の気合に、さすがの鬼王丸も打たれたものか、後へヘタと退いたが、そこは奸悪かんあくの猛夫である。そのままへたばりもしなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
理想的な迫害は、その奸悪かんあくな家庭によって実現されていた。あたかも蜘蛛に仕えてる蠅のようなありさまだった。
彼等の眼底にちらちらと動く赤馬に乗った上野介の姿の中には「忠臣蔵」の師直もろなおによって象徴された奸悪かんあく無比な人間像はかすかなかげさえも残してはいないのである。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
僕は僕の配達区域に麻布本村町あざぶほんむらちやうの含まれてることを感謝するよ、僕だツて雨の夜、雪の夜、みぞれ降る風の夜などは疳癪かんしやくも起るサ、華族だの富豪だのツて愚妄ぐまう奸悪かんあくはい
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
王政一新の前日までは、鎖攘を唱えるものは忠誠とせられ、開港を唱えるものは奸悪かんあくとせられた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「一ノ関は奸悪かんあくの人だ、それを疑う者はないだろう」と玄察は、殆んど痛憤の口ぶりで云った
あれを奸悪かんあくだなど言うのは、奸悪のきばを磨く機縁に恵まれぬやから所詮しょせんは繰り言にしか過ぎん。ではそんな詰らん老人をなぜ背負って火の中を逃げた。孟子もうしは何とやらのじょうと言ったではないか。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
燕王の言に曰く、始め難にう、むを得ずして兵を以てわざわいを救い、誓って奸悪かんあくを除き、宗社を安んじ、周公しゅうこうの勲を庶幾しょきせんとす。おもわざりき少主予が心をまこととせず、みずから天に絶てりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
如何なる奸悪かんあく無道な所業といえども、止むを得ない事として許されておりましたのと同様に、現在の社会に於ても、金銭と、これに伴う名誉、地位のためには、法律に触れず、他人に知れない限り
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのときになって初めて、寝起きのぼんやりした私の頭が、かれらの奸悪かんあくな計略を理解した。つまり、まとめて売れば安くなるが、一尾ずつなら安い値踏みはできない、という狙いなのだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あれを奸悪かんあくだなど言ふのは、奸悪のきばを磨く機縁に恵まれぬやから所詮しょせんは繰り言にしか過ぎん。ではそんな詰らん老人をなぜ背負つて火の中を逃げた。孟子もうしは何とやらのじょうと言つたではないか。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
奸悪かんあくなる白人共の手の伸びるのは其の時です。土地測量器を手にした者共が、諸君の村へやって来るに違いない。諸君の試錬の火が始まるのです。諸君が果して金であるか? 鉛のくずであるか?
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それは明らかに故意にやっているもので、被告の痴鈍を示すものではなく、実に巧妙と狡猾こうかつとを示すものであり、法廷を欺く常習性を示すものであり、被告の「根深い奸悪かんあく」を現わすものである。
入京会葬をとどむるの事、遺詔にづと云うといえども、諸王、せめ讒臣ざんしんたくして、しこうして其の奸悪かんあくのぞかんと云い、こう孝陵こうりょうに進めて、而して吾が誠実を致さんと云うに至っては、けだ辞柄じへい無きにあらず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのときになって初めて、寝起きのぼんやりした私の頭が、かれらの奸悪かんあくな計略を理解した。つまり、まとめて売れば安くなるが、一尾ずつなら安い値踏みはできない、というねらいなのだ。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小森を仕止めたことで奸悪かんあくの所在をはっきりさせ、全藩に侍の本分と決意のほどを示した、除村は目的を達したのだ、城下に乱を起こし、多くの人を謀反の罪に巻きこむようなことはしないはずだ
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
竜右衛門は心のなかで「これは奸悪かんあくなるものだ」とつぶやいた。
女は同じ物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)