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太洋
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たいやう
先づ
第一の
喜悦は、
先刻輕氣球の
上で
疑つた
樣に、
今の
今まで、
我等が
泛べる
此太洋は、
大西洋か、はたアラビアン
海かも
分らなかつたのが、
只今の
水兵の
言で、
矢張私の
想つた
通り、
此洋は
常に
此點に
向つて
深く
意を
用ゐ、
狂瀾逆卷く
太洋の
面に
於て、
目指す
貨物船を
撃沈する
塲所は
必ず
海底の
深さ五十
米突に
足らぬ
島嶼の
附近か、
大暗礁又は
海礁の
横つて
居る
塲所に
限つて
居る
相だ。
機關室に
働く
事も
能はず、
詮方無きまゝ、
立つて
見つ、
居て
見つ、
艦首から
縹渺たる
太洋の
波濤を
眺めたり、「ブルワーク」の
邊から
縱帆架に
飜る
帝國軍艦旗を
仰いで
見たり、
機關砲を
覗いて
見たり