大門だいもん)” の例文
このは、まちは、いつもとことなって、いろいろの夜店よみせが、大門だいもん付近ふきんから、大通おおどおりにかけて、両側りょうがわにところせまいまでならんでいました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
翌朝は、三人とも元気に肩を並べて、かすみの晴れるまに大門だいもん峠を越え、和田村をすぎて、やがてひる少し過ぎには、和田の大峠おおとうげをのぼりつめた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今も大門だいもんという地名があるが、その表口にもとは大門が建っていて、そこから文殊堂まで、少し斜め東北に向って真直ぐに参道がついている。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
上野から日本橋へ来る電車——確か大門だいもん行だったと思う——品川行にした処で、あの往復切符、勿論乗換札じゃないのだよ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三代の栄耀えいえう一睡のうちにして、大門だいもんの跡は一里こなたに有り、秀衡ひでひらが跡は田野に成りて、金鶏山のみ形を残す。先づ高館たかだちにのぼれば、北上川南部より流るる大河也。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
家業を変えて肴屋さかなやを始め、神田かんだ大門だいもん通りのあたりを得意に如才なく働いたこともありますが、江戸の大火にって着のみ着のままになり、流れて浅草あさくさ花川戸はなかわどへ行き
せめて燒跡やけあとなりとも弔はんと、西八條の方に辿り行けば、夜半よはにや立ちし、早や落人おちうどの影だに見えず、昨日きのふまでも美麗に建てつらねし大門だいもん高臺かうだい、一夜の煙と立ちのぼりて、燒野原やけのはら
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
其れを取囲とりかこんだ一町四方もある広い敷地は、桑畑や大根畑に成つて居て、出入でいりの百姓が折々をり/\植附うゑつけ草取くさとりに来るが、てらの入口の、昔は大門だいもんがあつたと云ふ、いしずゑの残つて居るあたりから
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
残菜入ざんさいいれ有合ありあわせのものを詰め、身支度をいたし、清助という百姓の案内で、少し遅くなりましたけれども真間の根本をなだれあがりにあがって参ると、総寧寺の大門だいもんまでは幅広の道で
そこで、ちっとばかり古い事を並べて見ると、本編最初からお馴染なじみになっている大門通りは、くるわの大門の通りなのだから大門おおもんとよんでください。芝にも大門があるがあれは大門だいもんである。
私等は雨の晴れ間を大門だいもんのところの丘の上に上って、遙か向うに山が無限に重なるのを見たとき、それから其処のところから淡路島が夢のようになってよこたわっているのを見たときには
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
大門だいもん洋家具店のものですが、ご注文の長イスを、おとどけにまいりました。」
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かつはまた百両の金の隠し場所にもこまり候故、そのまゝ引返し、とぼ/\と大門だいもんのあたりまでまいり候処、突然うしろより、モシ良乗殿りょうじょうどの、早朝より何処いずこへおでかと、声掛けられ、びっくり致し振返れば
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ひつそりとけやき大門だいもんとざしありひつそりと桜咲きてあるかも
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
大門だいもんまで遣ったが、お梅はんお前もまア一昨年から前町へ来て、のようにまア夫婦暮しでく稼ぎなさるが、七兵衞さんは以前もと大家の人ですが、運悪く田舎へ来てなア気の毒じゃ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私等は雨の晴れ間を大門だいもんのところの丘の上に上つて、遙か向うに山が無限に重なるのを見たとき、それから其処そこのところから淡路島あはぢしまが夢のやうになつてよこたはつてゐるのを見たときには
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
大門だいもんを出ると、角に尾張屋おわりやと云う三階の料理茶屋があります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)