咽元のどもと)” の例文
あるいはその間に艱難かんなん辛苦など述立てれば大造たいそうのようだが、咽元のどもと通れば熱さ忘れると云うその通りで、艱難辛苦も過ぎて仕舞しまええば何ともない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
句意は三伏さんぷくの暑き天気にかわきたる咽元のどもとうるおさんと冷たき水を飲めば、その水が食道を通過する際も胸中ひややかに感ずる所を詠みたるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
とうっかり向うを向いて便をそうとする処をシュウと抜討ちに胴腹どうばらを掛けて斬り、又咽元のどもとを斬りましたから首が半分落るばかりになったのを
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お勢と顔を見合わせると文三は不思議にもガラリ気が変ッて、咽元のどもとまで込み上げた免職の二字を鵜呑うのみにして何わぬ顔色がんしょく、肚のうちで「もうすこしッてから」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
心丈夫に車夫の顔を見れば二十五六の色黒く、小男のせぎす、あ、月にそむけたあの顔がれやらで有つた、誰れやらに似てゐると人の名も咽元のどもとまでころがりながら
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
致しながら人々の寢入りたる樣子をかんがへ喜内樣の御病氣つかれにて眠り給ひしを見澄みすまし一刀に御咽元のどもと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
べう、十べう大叫喚だいけうくわん、あはや、稻妻いなづま喰伏くひふせられたとおもつたが、このいぬ尋常じんじやうでない、たちまちむつくときて、をりからをどかゝ一頭いつとう雄獅をじゝ咽元のどもと噛付くひついて、一振ひとふるよとへたが
心丈夫こゝろじようぶ車夫しやふかほれば二十五六のいろくろく、小男こをとこせぎす、あ、つきそむけたあのかほれやらでつた、れやらにるとひと咽元のどもとまでころがりながら
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
聞て何れも驚き集り來るゆゑ幸手宿さつてじゆく騷動さうどう大方ならず我も/\と提灯ちやうちんたづさ駈着かけつけたり是より先平吉は一散に其所へ來て見れば無殘や父平兵衞は肩先かたさきよりひばらへ掛て八寸程切下られ咽元のどもとには止めの一刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)