取戻とりもど)” の例文
三十分ばかり夜風に吹かれて、ようやく常の心を取戻とりもどした金三郎は、何んから英雄的な心持になって、元の自分の部屋に帰って行きました。
おかみは独で肝煎きもいって、家を近在きんざいの人に、立木たちきを隣字の大工に売り、抵当に入れた宅地を取戻とりもどして隣の辰爺さんに売り
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
以て近々に取戻とりもどして遣はさんして又其方は家内にてこはいものは誰なるやと尋ねられければ五郎藏ハイ私しの怕者こはいものは番頭の久兵衞でござります毎度私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんとしてその誓約ちかひふたゝ地上ちじゃうもどらうぞ、そのつまはなれててんから取戻とりもどしてたもらずば?……なぐさめてたも、をしへてたも。
僕達はこの時代の軟弱な風潮に反抗するんです。そして雄渾ゆうこんな本当の日本の「こころ」を取戻とりもどそうと思うんです。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
れば、はれるとわしよわる。天守てんしゆからは、よくさばけ、最早もはをんなおもるやうわかひとさとせとある……御身達おみたち生命いのちへても取戻とりもどしたいとつてふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
秋山紳士は、自分にかけられたうたがいが解かれそうになったので、元気を取戻とりもどしながら話した。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
村の人達はお金をすつかり取戻とりもどし、泥坊どろばう袋叩ふくろたたきにして追つ払ひました。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
というのはもと三千円以上五千円以下の賄賂わいろを使うたからで、その使うた賄賂を取戻とりもどす上に、自分が一生安楽に暮せるだけの金を儲けなくてはならんという考えから、市民に対して虐政ぎゃくせいを施す。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
……だが、そこでジナイーダは、わたしの顔の表情からして、相変らず眼を上げずにはいるものの、もうわたしが意識を取戻とりもどしたことを察したものと見えて、素早すばやく身を起すと、こう言い放った。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
半分にして吉三郎に菊をめあはせ養子となし利兵衞夫婦ふうふ隱居いんきよ致す可し且つ彌太郎方へは又七を取戻とりもどせと申渡されけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、それ取戻とりもど唯一たゞひとつの手段てだてふのが、つくなひのざうつくるにある、ざうが、御身おみたちに
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオ では、取戻とりもどしたいか? なんために?
立て今日御奉行樣がお秀を取戻とりもどして遣はすと仰せられた故離縁状は何樣どうしてもかゝずと云ふに番頭久兵衞は甚だこまはていや然樣さやうなる事を云はれたとて離縁状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)