ささ)” の例文
天井から、釣鐘つりがねが、ガーンと落ちて、パイと白拍子が飛込む拍子に——御矢おんや咽喉のどささった。(ずまいを直す)——ははッ、姫君。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
続いて眼に触れたのは醜怪なる𤢖わろ三人の屍体で、一人いちにんは眼をつらぬかれた上に更に胸を貫かれ、一人は脳天を深くさされて、荒莚あらむしろの片端をつかんだまま仰反のけぞっていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ぞろぞろ下足の方へ立っていく客の群れの中から、こんな聞こえよがしの高ッ調子がまだ高座のまん中で手を突いたまんまでいる圓朝の耳へ鋭く痛くささってきた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
女は、もはやうにことれていた。そして、左の頸と肩との附根つけねの所に、鋭い吹矢ふきやが深々と喰い込んでささっている。おびただしい出血は、それがためのものであるらしい。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
室内はすっかり荒され、散乱した書類の中に、有松はあけに染って倒れていた。その右手にはピストルがかたく握られてあったが、彼は引金をひく前に、心臓をさされたものらしかった。
深夜の客 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「あぶないがな、針がささっているやないか。」
(新字新仮名) / 横光利一(著)
茨にやささ
蛍の灯台 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
大当り、尺的しゃくまとに矢のささっただけは新粉屋の看板より念入なり。一面藤の花に、蝶々まで同じ絵を彩った一張の紙幕を、船板塀の木戸口に渡して掛けた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すすきの中へぐいと入れたが、ずぶりと参らぬ。草の根が張って、ぎしぎしいう、こじったがささりません。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黙って俯向うつむいて線香を供えた。細い煙が、裏すいて乱るるばかり、墓の落葉はうずたかい。湿った青苔に蝋燭ろうそくささって、揺れもせず、燐寸マッチでうつした灯がまっすぐに白くった。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議な人を二人見て、遣切れなくなってこのうちへ飛込んだ。が、ながしの笛が身体からだささる。いつもよりはなお激しい。そこへまた影を見た。美しい影も見れば、可恐おそろしい影も見た。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神職 (あばき出したる形代かたしろわら人形に、すくすくと釘のささりたるを片手に高く、片手に鉄槌をかざすと斉しく、威丈高いたけだか突立上つッたちあがり、お沢の弱腰よわごしどうる)汚らわしいぞ! 罰当ばちあたり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思わず、崖へころがりますと、形代かたしろの釘でございましょう、針の山の土が、ずぶずぶと、このちちへ……わきの下へもささりましたが、ええ、痛いのなら、うずくのなら、骨が裂けてもこたえます。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「痛い、ささって、」