けい)” の例文
「いや、それは拙者も考えていたところだ。いかにも、けいのいう通り、きめるならば、今ここで、神にいのるまえに、神へ誓ったほうがよい」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さよう、小名木川おなぎがわの五本松は芭蕉翁ばしょうおうが川上とこの川しもや月の友、と吟じられたほどの絶景ゆえけいたりがたくていたりがたき名木めいぼくでしょう。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
返事を出し損なって、その中/\と思いながら、つい/\横着おうちゃくを極めていたら、今日母から少々不機嫌の音信いんしんに接した。けいと妹の件の催促だ。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
而して余が突嗟とつさ之を承諾したる当夜のこゝろざしならんや、だ「刑余の徒」たるの一事のみ、けいと余と運命をおなじふする所也
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
けいそう阿甥あせい阿姪あてつ、書生など三階総出の舞台の中央にすつくと突立つゝたつ木強漢(むくつけをとこ)。其れ韈(くつした)をお穿きなさい。韈は穿きぬ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
すべてこれらの諸点において、先生とていたりがたくけいたりがたき間柄あいだがらにありながら、しかも丁寧に頭を下げるのは、まられて仕方なしに下げるのではない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けいを招じて驚嘆の叫び承わり度候、山を見ては、兄を思う、昨日今日の壮観黙って居られず、かくは
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
自分が膝をまじえて語るにる人物はといえば、まず、南の奉行大岡越前と、この、街の小父おじさん蒲生泰軒と、いずれも、けいたりがたくていたりがたし……この二人よりないと
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
前の歌の才気めざましきはさもある事ながら、人を死ねよのわざとらしきは、後の歌の、句様くざまは余り有難からねど、よく杜鵑のこころかなひたるにはけいたるあたはずやと云はむ。さはれ我が
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なめた事はない。けいが去って後の葉子さんの一身に関して、責任を持つ事なんか、僕はしたいと思ってもできはしないが、もし明白にいわせてくれるなら、兄はまだ葉子さんの心を
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
一月号の「けい」では私上野の祖父おじを思い出して一生懸命に拝見いたしました。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この鉄砲とても、いつぞや、塩尻峠のいのじヶ原で持ち出された業物わざものと、ていたり難く、けいたり難い代物しろものですが、それを持ち出した留守居の源五の腕だけは、あの時の一軒屋の亭主よりも上らしい。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然りわれは、けいたもとを分ってより、女色のおりに飼われ、懶惰らんだの肉をむしばまれて生く、怏々おうおうとして無為の日を送るすでに五年。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
持前の侠気おとこぎと喧嘩好きから、この喧嘩屋の夫婦、一生涯の協力を約するのは当然で、ここに、顔形から剣を取っての腕まえまで、いずれもけいたりがたくていたりがたい神尾喬之助がふたり
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ていたりがたし、けいたり難しでしょう」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
けい閣下
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
はからずも先頃、吉岡道場にて、けいの名を聞く。万感交〻こもごも、会わんか、会わざらんか、迷うて今、酒店に大酔を買う。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どれもこれもていたりがたくけいたりがたき腕白顔わんぱくがおだ。さだめし、屋敷やしきへかえったのちには、母者人ははじゃびとからお小言こごとであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「故人の評はいえません。しかし、孔明も彼の智には深く伏しています。また襄陽人士のあいだでも、二人を目して、けいたりがたていたり難しといっています」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、びならべて、いずれも、現天皇の寵臣として、けいたり難していたり難き者と見ていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸葛けいは、まだ若いですが、洛陽の大学では秀才の聞えがあり、詩文経書通ぜざるはありません。ことに自分が感服しているのは継母に仕えること実の母のようで、その家庭を
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きのうは、ひどい目にあいましたよ。粛けいとしたことが、どうもお人が悪い」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やあ幹けい。すっかり酒気が醒めたようじゃないか。さあ、大杯でほし給え」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中国とは正にていたり難しけいたり難しといってよいかもしれない。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)