もよおし)” の例文
これはけだし一門の大統領、従五位勲三等河野英臣の発議に因て、景色の見物をかねて、久能山の頂で日蝕の観測をしようとするもよおしで。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お勢は生得の出遊であるき好き、下地は好きなり御意ぎょいはよし、菊見のもよおしすこぶる妙だが、オイソレというも不見識と思ッたか、手弱く辞退して直ちに同意してしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
次男ラヴェンは健気けなげに見ゆる若者にてあるを、アーサー王のもよおしにかかる晴の仕合に参り合わせずば、騎士の身の口惜しかるべし。ただ君が栗毛のひづめのあとにし連れよ。翌日あす
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宴席に園遊会に凡そ人の集るところに芸者といふもの来らざれば興を催す事あたはざりしは明治年間四十余年を通じての人情なりけり。年改れば新年の宴あり年尽きんとすれば忘年のもよおしあり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
またいつかのもよおしよる、鏡に向うように火の境を覗いて見て
納涼がてらのもよおしだが、遠出をかけて、かえりは夜があけるのだから、いずれも相応めかしていて、羽織、足袋穿たびばきが多かった。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんなもよおしの事はこれまで聞いたことがない。
失礼な事を云うようですが、今日のもよおしはじめ、貴女方のなさいます慈善は、博くまんべんなくなさけをお懸けになりますので、ひでりに雨を降らせると同様の手段。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いろいろなもよおしもあったけれど
献立がきが、処々ところどころくれないの二重圏点つきの比羅びらになって、辻々、塀、大寺の門、橋の欄干にあらわれて、芸妓げいしゃ屋台囃子やたいばやしとともに、最も注意を引いたのは、仮装行列のもよおしであった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当夜は、北町の友達のその座敷に、五人ばかりの知己ちかづきが集って、袋廻しの運座があった。雪を当込あてこんだもよおしではなかったけれども、黄昏たそがれが白くなって、さて小留こやみもなく降頻ふりしきる。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだわかくって見番の札を引いたが、うち抱妓かかえで人に知られた、梅次というのに、何かもよおしのあった節、贔屓ひいきの贈った後幕うしろまくが、染返しの掻巻かいまきにもならないで、長持の底に残ったのを
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とこの桑名、四日市、亀山と、伊勢路へかかった汽車の中から、おなじ切符のたれかれが——そのもよおしについて名古屋へ行った、私たちの、まあ……興行か……その興行の風説うわさをする。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もよおしのかかることは、ただ九牛きゅうぎゅう一毛いちもうに過ぎず候。凱旋門がいせんもんは申すまでもなく、一廓いっかく数百金を以て建られ候。あたかも記念碑の正面にむかひあひたるが見え候。またそのかたわらに、これこそ見物みものに候へ。
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
禰宜 ああ、いやいや、さような斟酌しんしゃくには決して及ばぬ。料理かた摺鉢すちばち俎板まないたひっくりかえしたとは違うでの、もよおしものの楽屋がくやはまた一興じゃよ。時に日もかげって参ったし、大分だいぶ寒うもなって来た。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
秋葉の旦那だんな、つむじが曲つた。颶風はやての如く、御坊ごぼうの羽黒と気脈を通じて、またゝくの今度のもよおし拙道せつどうは即ちおおせをうけて、都鳥の使者が浜松の本陣へ着いたところを、風呂にも入れず、縁側から引攫ひっさらつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もよおしはまだはじまっていない。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)