介添かいぞえ)” の例文
久助さんだけは当然介添かいぞえとして行かにゃなるまいから、同行三人——それで明早朝の約束ということに決めてしまいましょう、ねえ、池田先生
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
介添かいぞええに出ている、年増としまの気のきいた女中が、その時の様子を思い浮べさせるように、たまらなくおかしそうにふうッといって、たもとで口をおさえた。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そういう言葉に執成とりなされたあとで、年下の芸妓を主に年上の芸妓が介添かいぞえになって、しきりになまめかしく柚木を取持った。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その心は色に出て、医師せんせいは小松原一人は遣らなかった。道しるべかたがた、介添かいぞえに附いたのは、正吉と云うわかい車夫。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そこに石井戸があるが、ここは高台なので、怖ろしく深いぞ。——おとこ。ばば殿が、墜ちると事だ。介添かいぞえしてやれ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ故信を得た者は、不信な者が不信のままにでも成仏するように、介添かいぞえの役を果さねばならぬ。識らなくともおのずから仏の国に居るように導くことである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
自分は紺野どのの介添かいぞえとして来たが、ばあいによっては助太刀すけだちをすると思ってもらいたい、吉川十兵衛。
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
午の下刻げこく、上様ご中食ちゅうじきの後、お仮屋青垣かりやあおがきまでお出ましになるが、特別の思召しをもって、垣そとにて両人に床几しょうぎをさしゆるされる。……介添かいぞえはおのおの一名かぎり。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その愛というのも智力に介添かいぞえされない盲目の愛ですから大抵利己主義的の愛に停まっています。
婦人改造と高等教育 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「晩の十時にお好みの武器を持って介添かいぞえを一人つれて、会社の裏の松林へ来てくれとある」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この前ポラーノの広場でデストゥパーゴに介添かいぞえをしろと云われて遁げた男のようでした。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
高大之進が鍬を持って掘るまねをすると、人の介添かいぞえで一風がちょっと手を添えただけだ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
最後にデンプシーの審判で勝負が決まった時介添かいぞえに助けられて場の中央に出て片手を高く差上げ見物の喝采に答えた時、何だか介添人の力でやっと体と腕を支えているような気がした。
映画雑感(Ⅵ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それから博士夫妻の介添かいぞえで、床盃とこさかずきの式が済んで二人きりになると、最前から憂鬱ゆううつな顔をし続けていた澄夫は、無雑作に………………、………………………………………………………………………。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とにかく兄は真面目まじめに坐っていた。嫂も、佐野さんも、お貞さんも、真面目に坐っていた。そのうち式が始まった。巫女みこの一人が、途中から腹痛で引き返したというので介添かいぞえがその代りを勤めた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お介添かいぞえ、いろいろと御苦労でござった。そなたも同じ旗本、とかく旗本は大たわけ者に限りますのう。骨が硬うて困るとの仰せじゃ。あめでもせんじて飲みましょうぞい。——お坊主! 早乙女主水之介罷りかえる。御案内下されい」
きたり見るなら格別、行いて礼をすべきなんらの心構えを持たないという女王様を、不破の関守氏が説いて、口説くどき落して、自分が介添かいぞえとなって
申憎もうしにくうございますけれども、——今しがた、貴方の御令閨ごれいけいのお介添かいぞえで——湯殿へ参っております、あの女なのです。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「武士のたしなみ。あたりまえなことだ。また、当日の朝は、介添かいぞえ一名の同行はゆるされておるから、船島まで、供をして、そちも行け。——よいか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいかげんに黙らないと後悔するぞ、おれは酔興で介添かいぞえに来たんじゃない、来るには来るだけの役目があるんだ、文句があるなら采女うねめヶ原へでもゆこうじゃないか」
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
柳原伯夫人のお姉さんの、樺山かばやま常子夫人が介添かいぞえで、しっとりとしていられたが、白蓮さんには『踏絵』で感じた人柄よりも、ちょくで、うるおいがないと思ったのは、あまりに、『踏絵』の序文が
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「よし、おい、誰かおれの介添かいぞえ人になれ。」
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
仏頂寺弥助は、それに介添かいぞえとして働き、かなりの時間を費して、ともかくも、二人の傷を縫いおわって、体中を、晒ですっかり巻いてしまってから
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あわてて、屏風内から、這い出そうとするので、介添かいぞえの人々は、亀の子を抑えるようにつかまえて、叱りつけた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道具方や介添かいぞえまでが、キビキビした働きぶり、スカリスカリと歯切れがよく進んで行く興行ぶりは、従来、演芸の吉例(?)としての、初日の不揃いとか
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
敵には定めし大勢の介添かいぞえもついていようし、わるくすれば、卑怯な計画はかりごともあろうにと、死所の覚悟はもちろんのこと、死に顔のわるくないよう、歯も白く塩でみがき
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
烏帽子えぼし直垂ひたたれでいちいのしゃくを手に取り持った祭主殿が、最初から、あちら向きにひとり坐って神妙に控えてござる——さてまた祭主と祭壇の周囲には当然、それに介添かいぞえ
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
縁にいた次男の義時が、母によばれて、母と共に、頼朝が具足をつけるのを、側から共に介添かいぞえした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに介添かいぞえを一人と弓持一人と的持を三人ずつ引具ひきぐして、徐々しずしずと南の隅へ歩み出でたのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
源次郎は吉岡家の跡目相続人でもあれば、その者を立てるが、まだ年端としはもゆかぬ少年ゆえ、門弟何名かが、介添かいぞえとして立合いにつくということ……それも念のため申しておくぞ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、場所、時間まで言い残し、双方とも助太刀介添かいぞえのことなし——とまで極っていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵馬は流鏑馬の時の綾藺笠あやいがさ行縢むかばきで、同じ黒いたくましい馬に乗って、介添かいぞえ的持まともちをひきつれて仮屋へ帰って、直ちに衣服を改めて編笠で面を隠して、大泉寺小路というのを、ひそかに廻って
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、介添かいぞえの者が駕の外から居眠りを抑えると、この男、とたんに大きな眼をあいて
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
介添かいぞえに来た片柳伴次郎が小首を傾ける。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『吉田休安に服薬方を仰せ付けられ、外科には、栗崎道有を遣わされて、大切に保養せいとあるので、はや退出した。他の高家衆に介添かいぞえまで命じられて、随分、御懇ごねんごろなおいたわりであったらしい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
介添かいぞえには、お松が時々出てあしらう。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)