人事不省じんじふせい)” の例文
いまパイ軍曹は、叱りとばすどころではなく、人事不省じんじふせいにおちいっていたのは、ピート一等兵のため、はなはだ幸運であった。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
同仁どうじん病院長山井博士の説によれば、忍野氏は昨夏脳溢血のういっけつわずらい、三日間人事不省じんじふせいなりしより、爾来じらい多少精神に異常を呈せるものならんと言う。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人とも苦もなくじふせられて、麻酔剤を嗅がされ、そのまま人事不省じんじふせいに陥ったが、やっと今、電話のベルで眼がさめたところだというのでした。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
かれさむさがほねてつするのことを明瞭めいれうあたまうかべて判斷はんだんするのには氣候きこう變化へんくわあまりに急激きふげきであつた。かれあひだ人事不省じんじふせい幾時間いくじかん經過けいくわした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あの毒薬の注射にしても、ゴリラを殺すのが目的ではなく、一時人事不省じんじふせいに陥らせ、檻の中から、逃げ易い病院へ移させる手段でなかったとは云えぬのだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
刀を差した男の体は鳥のようであった。河野は何時いつの間にか人事不省じんじふせいに陥ってしまった。そして、気がついた時には、刀を差した男がうしろへ廻って背をさすっていた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かくそうとする様子にご安心なされませおかおは見は致しませぬこの通り眼をつぶっておりますと行燈の灯を遠のけるとそれを聞いて気がゆるんだものかそのまま人事不省じんじふせいになった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かれはもうたくさんの水を飲んでいて、半分人事不省じんじふせいであった。わたしはかれの頭をうまく水の上に上げてやったので、どうにかかれは上がって来た。仲間なかまはかれの手を取って引き上げる。
船からおりると、八、九里の間は駕籠かごに乗るのであるが、駕籠の中で幾度いくたびとなく卒倒しながら、九死一生の内にも無理に長崎へ着いた。そのために一週間ばかりも人事不省じんじふせいに陥ったままであった。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
それ以来、私は人事不省じんじふせいとなり、全身ところきらわず火傷やけどを負ったまま、翌朝よくちょうまで昏々こんこん死生しせいの間を彷徨ほうこうしていたのである。
彼はエデインバラに留学中、電車に飛び乗らうとしてころげ落ち、人事不省じんじふせいになつてしまつた。が、病院へかつぎこまれる途中も譫語うはごとに英語をしやべつてゐた。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
俊夫君が午前三時十分頃に電話をかけたときに、まだ麻酔剤のために人事不省じんじふせいだった女弟子も、もうこの時には普通の人になって、お菓子などを運んで出ました。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
でも震動しんどうはずいぶんひどかったから、わたしは人事不省じんじふせいで地べたにころがった。わたしが正気に返ったとき、わたしはまだ汽車の中にいると思った。わたしはまだ運ばれているように感じたのであった。
人事不省じんじふせいの青年(男)と、その所持品らしき鞄(スーツケースと呼ばれる種類のもの)の残留せるを発見し届出あり、目白署に保護保管中なり。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それからいく分間、あるいはいく時間人事不省じんじふせいに陥っていたのか、もとより私は存じません。
塵埃は語る (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
これは様子がおかしいと気がついて、やっと助け下ろしますと、「くずれる鬼影おにかげ!」と不思議な言葉を呟いたまま人事不省じんじふせいおちいってしまいました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時計を見ると、わずかに三十分間人事不省じんじふせいに陥っていたことが分かりました。
塵埃は語る (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
佐々砲弾は、ロケットの中に閉じこめられたところまでは覚えていたが、それから急にドンと激しい衝撃をうけた途端に人事不省じんじふせいに陥ってしまった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その電話は春日町二丁目の「近藤つね」という美容術師のうちからであったこと、美容術師は、一人の女弟子とともに住んでいるが、覆面の盗賊に入られて麻酔剤を嗅がされ、人事不省じんじふせいに陥ったから
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
同僚が警笛けいてきを吹いたので、たちまち宿直しゅくちょくの連中がかけつけて、人事不省じんじふせいの警官をとりまいて、元気をつけてやった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき三人が三人とも、熱砂ねっさの上に、おっとせいがたたきつけられたようなかっこうで人事不省じんじふせいにおちいり、三十分ばかり死んだようになっていた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「犯人というほどのものじゃないでしょうに。それに赤見沢博士は今も人事不省じんじふせいを続けていて、何一つ出来ない」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大暴風の中を突破して、やっと陸地をみつけて海岸に不時着した兵曹長は、そのまま、機上に人事不省じんじふせいになってしまったことは、皆さんおぼえておいででしょう。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その時、お医者さまの話では、千蔵がここにかつぎこまれて後ずっと人事不省じんじふせいになっていて、いくら注射をしても、気がつかないので、困っているということだった。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
“……さりながら、二少年は共に、人事不省じんじふせいのありさまにて発見せられたるゆえ、われらはおどろき、手当を加えつつあるも、いまだにそのききめなきはざんねんなり。
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして一札いっさつを入れ、人事不省じんじふせいの博士と遺留いりゅうかばんとを内容物もろとも引取っていったのであった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「超人X号」は、今ちょうど気をうしなって人事不省じんじふせいになっているようなものであった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は人事不省じんじふせいから醒めて、生きているよろこびを、やっと感じたばかりだったが、その悦びは束の間に消え去った。いくら生きていても、棺桶の中に入れられていては、どうしようもない。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「心臓やその他……機上で人事不省じんじふせいになるなんて、醜態しゅうたいですからねえ」
三重宙返りの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ギネタ湾頭の浅瀬あさせに艇をのしあげて、ぼくたちは「やれやれ助かった」と思った。ぼくたちは艇をとび出して、水を渡って海岸の砂の上に馳けあがり、気のゆるみで二人とも、人事不省じんじふせいおちいった。
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると隆夫は、とつぜん首をしめられ、人事不省じんじふせいに陥ったのだ。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)