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些々
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ささ
ふりがな文庫
“
些々
(
ささ
)” の例文
靱負が選んだのはその絵具塗りの内職だった、むろん賃銭は
些々
(
ささ
)
たるものだが、幾らかは食い減らしてゆく貯えの足しになるだろう。
日本婦道記:二十三年
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大急ぎで十五円八十銭を送っていただきたいというような
案配
(
あんばい
)
であった。そのつぎにおのれの近況のそれも
些々
(
ささ
)
たる茶飯事を告げる。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
些々
(
ささ
)
たる地位の利害に
眼
(
まなこ
)
をおおわれて事物の判断を誤り、現在の得失に終身の力を用いて、永遠重大の喜憂をかえりみざるによりて然るのみ。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
かくの如き時に於て、
些々
(
ささ
)
たる国内の外交、財政、あるいは国防その他の政治上に於て、党派的観察を以て争うとは何事ぞ。
憲政に於ける輿論の勢力
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
殊に一部の政客中に
些々
(
ささ
)
たる感情に捉えられて
故
(
ことさら
)
に異を
樹
(
た
)
て、いわゆる小異を捨てて大同に合するの雅量を欠く
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
▼ もっと見る
勿論
(
もちろん
)
些々
(
ささ
)
たる断片の珍奇を拾い上げて、やれビイドロの薬酒があったの、豚の寝姿をよんだ句があるのと、随筆風の博識をふりまわすべき時代ではない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「左様な、
些々
(
ささ
)
たる一個の
詮索
(
せんさく
)
ではござりませぬ。——
溯
(
さかのぼ
)
れば、ここ二十数年にもわたる大罪科を、前々代のときから、当将軍家は犯しておられまする」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私たちはいくら何でもそれ等の
些々
(
ささ
)
たる行為が私たちの全てだと
見做
(
みな
)
して終はれやうとは思ひませんでした。
『青鞜』を引き継ぐに就いて
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
最初にヘンデルと問題を起したのはマッテゾンであった。
些々
(
ささ
)
たる事から誤解を大きくして二人はハンブルク市場で決闘をする羽目にまで立ち至ったのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
些々
(
ささ
)
たる戦況に
一喜一憂
(
いっきいちゆう
)
することなく、
如何
(
いか
)
なる場合にも冷静にがっしりと規則正しく脈
搏
(
う
)
っていたが、しかし極めて
稀
(
まれ
)
には、大いなる
憂
(
うれ
)
い、大いなる喜びのために
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
些々
(
ささ
)
たる政治的技術によってはどうすることもできない最悪の事態に直面していたのである。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
その
後
(
のち
)
室内沈静にして、
些々
(
ささ
)
たる物音も聞えぬ事あり、時ありては畳を蹴立てて
噪
(
さわ
)
がしき
響
(
ひびき
)
の起る折あり、突然、きいーきいーと悲鳴をあげて、さもくやしげに泣く
音
(
ね
)
も聞ゆ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして自分はやはり同じようにクリストフを愛してると思っていた。しかし彼が愛してるのはもうクリストフの一身をだけだった。それは友情においては
些々
(
ささ
)
たることにすぎない。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
この問題にくらべると、他のことはすべて、どれもこれも、
些々
(
ささ
)
たり
眇
(
びょう
)
たることに過ぎない。阿賀妻などのことは吹けば飛ぶ問題だ。
煽
(
おだ
)
てあげ喜ばせて開拓の方針に沿わすればよい。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
パリー下水道の
開鑿
(
かいさく
)
は、決して
些々
(
ささ
)
たる仕事ではなかった。過去十世紀の間力を尽しながら、あたかもパリー市を完成することができなかったと同様に、それを完成することはできなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
要するに、想像はすこしでも手綱をゆるめられると、自然そのものよりも深く潜り高く
翔
(
かけ
)
るものなのだ。だから、たぶん大洋の深さもその広さの比例からするときわめて
些々
(
ささ
)
たるものであろう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
かくのごときは
歯牙
(
しが
)
にだもかくる
値
(
あたい
)
のなき、まことに
些々
(
ささ
)
たることではあるが、世には僕と同じく気の小さなものがあり、あるいは
容貌
(
ようぼう
)
とかあるいは身体の一部に何かの欠点あることを自覚して
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
よし政治家になるにも実業家になるにも、軍人になるにも役人になるにも、この大決心が欠けていて、
些々
(
ささ
)
たる吉凶禍福に心を奪わるるようでは、平々凡々の輩となりて果つるよりほかはありませぬ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
のみならず、母子の情愛は
些々
(
ささ
)
たる刑罰位には替えられぬ筈だ。
愛の為めに
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それは
些々
(
ささ
)
たる書技が見返られなくなったということである。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
けれどもそれが妄執となっては救う道はない、おのれを超脱せよ、
些々
(
ささ
)
たる自己の観念に囚われるな、学問は必ずいちどその
範疇
(
はんちゅう
)
の中へ人間を閉じこめる
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
窮極
(
きゅうきょく
)
して、彼の
思念
(
しねん
)
は、そこへ行きついた。この境地には
些々
(
ささ
)
たる愛憎もなく現在の不平もなかった。早く健康に
回
(
かえ
)
って、天意にこたえんとするものしか
疼
(
うず
)
いて来ない。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汗で美しい
襦袢
(
じゅばん
)
の汚れるのも
厭
(
いと
)
わず、意とせず、
些々
(
ささ
)
たる内職をして苦労をし抜いて育てたが、六ツ七ツ八ツにもなれば、
膳
(
ぜん
)
も別にして食べさせたいので、手内職では
追着
(
おッつ
)
かないから
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(一行あき。)裏切者なら、裏切者らしく振舞うがいい。私は唯物史観を信じている。唯物論的弁証法に
拠
(
よ
)
らざれば、どのような
些々
(
ささ
)
たる現象をも、把握できない。十年来の信条であった。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
然るに今
些々
(
ささ
)
たる枝葉よりして、改進一流の内にあたかも内乱を起し、自家の戦争に忙わしくして外患をかえりみず、ついにはかの判然たる二流の分界も、さらに混同するのおそれなきに非ず。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そのとらえがたい香はごく
些々
(
ささ
)
たるものにつながれていた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
些々
(
ささ
)
たる私の見聞もまた
不朽
(
ふきゅう
)
のものになった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ただ
市井
(
しせい
)
の無頼や押込みなどが頻々と起した
些々
(
ささ
)
たる小事件とのみは
観
(
み
)
られず、またその小事件だけを、切り離して、裁決することは出来ないし、なお将来の治政上にも、何の戒めにも
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
々
3画
“些”で始まる語句
些
些細
些少
些事
些末
些中
些程
些子
些細事
些小