丹誠たんせい)” の例文
れたのも同然どうぜんのものだが、まだすこしばかりいのちがあるらしい。わたし丹誠たんせいたすけたいとおもっている。」と、おじいさんはこたえました。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
最初は、ただただ、私の丹誠たんせいめた美しい椅子を、手離し度くない、出来ることなら、その椅子と一緒に、どこまでもついて行きたい、そんな単純な願いでした。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その時分から爺やはまめにその家のまわりの空地に豆だの胡瓜きゅうりだのねぎだのの畑を作っていましたが、みんな御主人に召し上っていただくために丹誠たんせいしたのだからといって
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
御用心ごようじんあそばさないといけません。あの童子どうじ詐欺師さぎしでございます。おそれながら、陛下へいかのおやまい侍医じい方々かたがたや、わたくしども丹誠たんせいで、もうそろそろ御平癒ごへいゆになるときになっておりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かけ用人無事に紀州表の取調とりしら行屆ゆきとゞき候樣丹誠たんせいこらし晝は一間に閉籠とぢこもりて佛菩薩ぶつぼさつ祈念きねんし別しては紀州の豐川とよかは稻荷いなり大明神だいみやうじん遙拜えうはいし晝夜の信心しんじんすこしも餘念よねんなかりしにかゝる處へ伊豆守殿より使者ししや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小さな庭だったけれど、福子の丹誠たんせいで草花のみどりの芽も、もう出ていた。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
官の手を待たずして此の文治郎が立所たちどころ打殺うちころすが、われは親兄弟もあるだろうが、これ手前てまえ親達おやたちは左様な悪人に産み付けはせまい、どうか良い心掛けにしたい、善人にしたいと丹誠たんせいして育てたろうが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
丹誠たんせいしてお稽古けいこしたおかげだよ。(松若の頭をなでる)
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「あんなれかかったが、こんなによくなるとは、きものは、丹誠たんせいひとつですね。」といって、たまげました。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
よく、うさぎが、垣根かきねしたほうのすきまから、あかと、とがったくちびるして、こちらのおじいさんが、丹誠たんせいしているくさや、盆栽ぼんさいなどをべたからでした。
うさぎと二人のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもそだてるとおなじようなもので、くさでもでも丹誠たんせいひとつだ。」
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)