上﨟じやうらふ)” の例文
婦人ふじんたちの、一度いちどをさましたとき、あの不思議ふしぎめんは、上﨟じやうらふのやうに、おきなのやうに、稚兒ちごのやうに、なごやかに、やさしくつて莞爾につこりした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何が笑ふべきものか、何が憎むに値するものか、一切知らぬ上﨟じやうらふには、唯常と変つた、皆の姿が羨しく思はれた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
一番には、上﨟じやうらふの御方一の台の局、前の大納言殿御娘、御年は三十路みそぢあまり給へども、御かたちすぐれ優にやさしくおはしければ、未だ二十ばかりにぞ見え給ふ。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
慶応三年六月昭憲皇太后の入内治定じゆだいぢぢやうの事が発表せられ、つい御召抱おめしかゝへ上﨟じやうらふ、中﨟等の人選があつたが、その際この薫子にも改めて御稽古の為参殿の事を申付けられた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
此月の初頃はじめごろなりしが、畫にあるやう上﨟じやうらふの如何なる故ありてか、かの庵室あんしつこもりたりと想ひ給へ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
歴々の上﨟じやうらふたち、衣裳美々しくよそはれたるまま、かなはぬ道とさとり、並居ならびゐたるを、さもあらけなき武士たち請取うけとり、その母親にいだかせて、引上げ引上げ張付はりつけにかけ——
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さくらちる春のゆふべや廃院はいゐんのあるじ上﨟じやうらふ赤裳あかもひいて
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
ぬかしろかりし上﨟じやうらふ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
錦葉にしきばみのて、きざはしはしらぢて、山々やま/\谷々たに/″\の、ひめは、上﨟じやうらふは、うつくしきとりつて、月宮殿げつきうでんあそぶであらう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もとよりやんごとなき都の上﨟じやうらふにてましましければ、和歌管絃かんげんのみちにくらからず、丹花のくちびるふようのまゆたまをあざむくばかりにて、もろこしの楊貴妃ようきひ
当麻語部嫗なども、都の上﨟じやうらふのもの疑ひせぬ清い心に、知る限りの事を語りかけようとした。だが、忽違つた氏の語部なるが故に、追ひ退けられたのであつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
下衆げす上﨟じやうらふきはもなく
ふツくりあをく、つゆにじんだやうに、手巾ハンケチしろいのをとほして、土手どてくさ淺緑あさみどりうつくしくいたとおもふと、いつツ、上﨟じやうらふひたひゑがいたまゆずみのやうな姿すがたうつつて、すら/\と彼方此方かなたこなたひかりいた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)