はゞ)” の例文
そこへると最早もはや寒帶林かんたいりんをはりにちかづいたことがわかります。すなはち落葉松林からまつばやしはゞはごくせまくなつてをり、ちひさくなつてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うしてほとん毎日まいにちごとつてうちに、萱原かやはらを三げんはゞで十けんばかり、みなみからきたまで掘進ほりすゝんで、はたはうまで突拔つきぬけてしまつた。
最初の中は此方こつちから身をかくして、こつそりさういふ土地に出かけて行つたが、後には平気で、はゞで、女を庫裡くりれて来ては泊らせてやつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ひさしたゞよ羽目はめなびいて、さつみづつる、はゞ二間にけんばかりのむらさきを、高樓たかどのき、欄干らんかんにしぶきをたせてつたもえる、ふぢはななるたきである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
首筋くびすぢうすかつたとなほぞいひける、單衣ひとへ水色友仙みづいろゆうぜんすゞしげに、白茶金しらちやきんらんの丸帶まるおびすこはゞせまいをむすばせて、庭石にはいし下駄げだなほすまでときうつりぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
多田院ただのゐん日光につくわう徳川家とくがはけ靈廟れいべうで、源氏げんじ祖先そせんまつつてあるから、わづか五百石ひやくこく御朱印地ごしゆいんちでも、大名だいみやうまさ威勢ゐせいがあるから天滿與力てんまよりきはゞかなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そのぎは銅鉾どうほこといふもので、はゞひろ大型おほがたのものでありまして、實用じつよう使つかつたものでなく、なに儀式ぎしきにでももちひたものとえ、やいばのところもするどくはなく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それから、何分なんぷんかの後である。羅生門の樓の上へ出る、はゞの廣い梯子の中段に、一人の男が、ねこのやうに身をちゞめて、いきを殺しながら、上の容子ようすを窺つてゐた。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其所そこにはたかさ二しやくはゞしやくほどわくなかに、銅鑼どらやうかたちをした、銅鑼どらよりも、ずつとおもくてあつさうなものがかゝつてゐた。いろ蒼黒あをぐろまづしいらされてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此外このほかはゞわづか一二寸程いちにすんほど地割ぢわれが開閉かいへいしたことをしるしたものはないでもないが、それも餘計よけいはない。一例いちれいげるならば、西暦せいれき千八百三十五年せんはつぴやくさんじゆうごねん南米なんべいチリ地震ぢしんである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
近江の石亭が雲根志うんこんしにいはく(前編灵異之部)信濃国高井郡渋湯しぶゆ村横井温泉寺の前に星河とてはゞ三町ばかりの大河あり、温泉寺の住僧遷化せんげの前年に、此河中へ何方いづかたよりともなく
さういふ態度をとると、彼の姿は顏と同じやうにはつきりと見えた——並外なみはづれた胸のはゞは手足の長さと均整がとれないほどだつた。きつと大抵の人は彼のことを醜男ぶをとこだと思ふだらう。
今日けふ甚麼御馳走どんなごちそう我々われ/\はしてれるか。』と、無暗むやみはゞかせたがる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
沈痛ちんつう調子てうしう云ツて、友は其のはゞのあるかたそびやかした。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
御新造ごしんぞ実家じつか葭町よしちやうはゞのきく芸者家げいしややであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「そんなら物は御相談でございますが、実はこの幅は手前共の床の間にははゞつたくて困つてゐる所なんです。で、一つ何でも結構で御座いますから、先生の小幅せうふくと御交換が願へましたら……なに、ほんの一寸した小幅で結構でございますから。」
其他そのたには、だい一のあなにもあるごとく、周圍しうゐ中央ちうわうとに、はゞ四五すんみぞ穿うがつてあるが、ごど床壇ゆかだんもうけてい。
さて足駄あしだ引摺ひきずつて、つい、四角よつかどると、南寄みなみよりはうそら集團しふだんひかへて、ちかづくほどはゞひろげて、一面いちめんむらがりつゝ、きたかたすのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
停車場ステーシヨンから町の入口まで半里ぐらゐある。堤防になつてゐる二けんはゞみちには、はぜの大きな並木が涼しいかげをつくつてて、車夫の饅頭笠まんぢうがさ其間そのあひだを縫つて走つて行く。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
日本につぽん最初さいしよつくられた銅器どうきまへよりははゞひろどうつるぎほこるいでありまして、そのひとつはくりすがたといふつるぎで、このつるぎはつばにあたるところがなゝめにまがつてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
相手あひてをんなとしは、むつばかりえた。あかはゞのあるリボンを蝶々てふ/\やうあたまうへ喰付くつつけて、主人しゆじんけないほどいきほひで、ちひさなにぎかためてさつとまへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
近江の石亭が雲根志うんこんしにいはく(前編灵異之部)信濃国高井郡渋湯しぶゆ村横井温泉寺の前に星河とてはゞ三町ばかりの大河あり、温泉寺の住僧遷化せんげの前年に、此河中へ何方いづかたよりともなく
しいをんな服粧みなりるいなど哄然どつわるはれる、おもへば綿銘仙めんめいせんいとりしにいろめたるむらさきめりんすのはゞせまおび、八ゑんどりの等外とうぐわいつまとしてはれより以上いじやうよそほはるべきならねども
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちひさな土橋どばしひとつ、小川をがは山川やまがはそゝぐところにかゝつてゐた。山川やまがはにははしがなくて、香魚あゆみさうなみづが、きやう鴨川かもがはのやうに、あれとおなじくらゐのはゞで、あさくちよろ/\とながれてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やまによつてこの灌木帶かんぼくたいはゞ大變たいへんせまいところもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
……つひむかふを、うです、……大牛おほうし一頭いつとう此方こなたけてのそりとく。図体づうたいやまあつして野原のはらにもはゞつたいほど、おぼろなかかげおほきい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さういふもののみがいつもはゞをして、何んなに仲の好いものでもその終まで完うせしむることは容易でないといふ男女の間柄を兎に角それまでしてゐるといふことは
島の唄 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
ひとは急に谷底たにそこへ落ち込む様に思はれる。其落ち込むものが、がるものと入り乱れて、みち一杯にふさがつてゐるから、谷の底にあたる所ははゞをつくして異様に動く。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地中ちちう犬小屋式いぬごやしき横穴よこあな穿うがつてあつて、その犬小屋いぬごやごど岩窟がんくつ入口いりくちまでは、一ぢやう尺餘しやくよ小墜道せうとんねるとほるのだ。て、犬小屋いぬごやごと横穴よこあな入口いりくちは、はゞじやくすんたかさが三じやくすんある。
女中ぢよちう一荷ひとに背負しよつてくれようとするところを、其處そこ急所きふしよだと消口けしぐちつたところから、ふたゝ猛然まうぜんとしてすゝのやうなけむり黒焦くろこげに舞上まひあがつた。うづおほきい。はゞひろい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると好気いゝきに為つて、はゞで、大風呂敷をたづさへて貰つて歩くといふ始末。殆ど村でも持余した。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
代助の買つた大きな鉢植の君子蘭くんしらんはとう/\縁側でつて仕舞つた。其代り脇差わきざし程もはゞのあるみどりが、くきを押し分けてながびてた。ふるくろずんだまゝ、日にひかつてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まねいて手繰たぐられるやうに絲卷いとまきからいといたが、はゞも、たけも、さつ一條ひとすぢ伸擴のびひろがつて、かた一捲ひとまきどうからんで
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝飯もはゞで下のレストランに入つて二人並んで食ひ、ホテルのマネイジヤアや番頭などにも平気で話し、あたり前の事でもするやうにして、B達は二人乗の軽快な馬車に乗つて出掛けた。
アンナ、パブロオナ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
くちあごの角度がわるいとか、の長さが顔のはゞに比例しないとか、耳の位置が間違まちがつてるとか、必ず妙な非難を持つてる。それが悉く尋常な言草いひぐさでないので、仕舞には梅子も少々考へ出した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まねいて手繰たぐられたやうに絲卷いとまきからいといたが、はゞたけさつ一條ひとすぢ伸擴のびひろがつて、かた一捲ひとまきどうからんで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼方あちらかどだから、遠く三四郎と真向まむかひになる。折襟をりえりに、はゞの広い黒繻子くろしゆすむすんださきがぱつとひらいて胸一杯いつぱいになつてゐる。与次郎が、仏蘭西の画工アーチストは、みんなあゝ云ふ襟飾えりかざりけるものだと教へて呉れた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのかははゞもつとひろく、まちもつとちかく、やゝせまところがう屋敷田畝やしきたんぼとなへて、雲雀ひばり巣獵すあさり野草のぐさつみめうなり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たちま心着こゝろづくと、おなところばかりではない。縁側えんがはから、まちはゞ一杯いつぱいに、あをしやに、眞紅しんくあか薄樺うすかばかすりかしたやうに、一面いちめんんで、びつゝ、すら/\としてく。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それを、四五軒しごけんつたむかがはに、はゞひろはしまへにして、木戸きど貸屋札かしやふだとして二階家にかいやがあつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとわけけてむため、自動車じどうしやをもう一だいたのむことにして、はゞけんとなふる、規模きぼおほきい、びたまちあたらしい旅館りよくわん玄関前げんくわんまへ広土間ひろどま卓子テーブルむかつて、一やすみして巻莨まきたばこかしながら
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて、かははゞぱいに、森々しん/\淙々そう/\として、かへつて、またおともなくつる銚子口てうしぐち大瀧おほたきうへわたつたときは、くももまたれて、紫陽花あぢさゐかげそらに、釣舟草つりぶねさうに、ゆら/\と乗心地のりこゝちゆめかとおもふ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かしこまりて何某なにがしより、鳥籠とりかごたか七尺しちしやくなが二尺にしやくはゞ六尺ろくしやくつくりて、溜塗ためぬりになし、金具かなぐゑ、立派りつぱ仕上しあぐるやう作事奉行さくじぶぎやう申渡まをしわたせば、奉行ぶぎやう其旨そのむねうけたまはりて、早速さつそく城下じやうかより細工人さいくにん上手じやうずなるを召出めしいだし
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あつさはざつへいうへから二階家にかいや大屋根おほやねそらて、はゞひろさはのくらゐまでみなぎつてるか、ほとん見當けんたうかない、とふうちにも、幾干いくせんともなく、いそぎもせず、おくれもせず、さへぎるものをけながら
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はゞせま黒繻子くろじゆすらしいおびひくめにめて、むね眞直まつすぐにてて、おとがひ俛向うつむいて、額越ひたひごしに、ツンとしたけんのあるはなけて、ちやうど、わたしひだり脇腹わきばらのあたりにすわつて、あからめもしないとつたふう
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
きふはゞのあるつよこゑ按摩あんまとき、がつくりと差俯向さしうつむく。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)