まのあた)” の例文
いはんまのあたりこれを語るをや。我は喜んで市長一家の人々と交れども、此の如き嫌疑を受くることを甘んじて、猶その家に出入すべくもあらず。
山県公はまのあたりその顔色を見ると痛くやつれておって、どんな不人情のものでももはや同情を惜しむ事の出来ぬほどである。
墓石ぼせきは戒名も読めかねる程苔蒸して、黙然として何も語らぬけれど、今きたってまのあたりに之に対すれば、何となく生きた人とかおを合せたような感がある。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此語は金風さんが嘗て広島にあつて江木鰐水の門人河野某に聞いた所と符合する。河野はまのあたり未亡人としての梅颸をも見た人であつたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
勘次かんじ假令たとひ什麽どんなことがあつてもまのあた卯平うへいむかつて一ごんでもつぶやいたことがないのみでなく、只管ひたすらあるもの隱蔽いんぺいしようとするやうな恐怖きようふ状態じやうたいあらはしてながら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
コレハ/\よく作られたと賞揚しやうやうばん、そのあと新詩しんし一律いちりつまたおくられては、ふたゝび胸に山をきづく、こゝはおほきかんがへもの、まのあたさゝげずに遠く紙上しじやう吹聴ふいちやうせば、先生ひげにぎりながら
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
西アフリカのアシャンチー人伝うるは、昔上帝人間にんかんに住みまのあたはなしたから人々幸福だった。
怪しみ疑いけるが、いままのあたり使人を見てその偽ならざるを知りたり
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はなはだしきに至りては、これを大御所とさえ言うんである。けれども、これはまのあたり山県公を見た人の言う事ではない。面り見ると、もはや顔色憔悴、気息奄々えんえんとしている。
嘗てまのあた査列斯チヤアルス四世をあざけりて、徳の遺傳せざるをば、汝に於いてこれを見ると云ひき。羅馬と巴里とより、月桂冠を贈らんとせしとき、ペトラルカは敢てすなはち受けずして、三日の考試に應じき。