金比羅こんぴら)” の例文
嫁取り、婿取りの相談、養子の橋渡し、船の命名進水式、金比羅こんぴら様、恵比須えびす様の御勧請ごかんじょうに到るまで、押すな押すなで殺到して来る。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ツイ一兩日前に、郷里の母親からわたしに手紙が來て、今度急に思ひたつて都農つのの義兄と一緒に讚岐さぬき金比羅こんぴらさまにお參りする。
金比羅参り (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
オヤジは大いに怒ってその日から毎日毎晩水を浴びて金比羅こんぴらサマへ裸参りをし、始終海舟を抱いてねて誰にも手をつけさせず
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
カ子の小さい時は元気山でな、五つの時に金比羅こんぴらさまの石段をひとりで登りよったもの。手をひいてやるというても、ふりきって登りよった。
おるすばん (新字新仮名) / 壺井栄(著)
金比羅こんぴらさんの天狗てんぐさんの正念坊しょうねんぼうさんが雲の中で踊っとる。の衣を着て天人様と一緒に踊りよる。わしに来い来いいうんや。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その中には屋島もあれば、小豆島せうどしまもあり、来島くるしまの瀬戸もあつた。ちよつと上陸すれば、金比羅こんぴらの長い長い石段もあつた。
女の温泉 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「あのお婆さんは、つい五、六日前に、すぐそこの、安井の金比羅こんぴら様のあちら側にお越しになりました」という。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
急ぎ大坂渡邊わたなべ紅屋庄藏べにやしやうざう方へぞ着しける此紅屋といふ旅人宿はたごや金比羅こんぴら參りの定宿ぢやうやどにて常樂院は其夜主人あるじの庄藏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きょうは正月の十日で、金比羅こんぴらまいりの当日、名代の京極きょうごく金比羅、虎の御門そとの京極能登守の上屋敷へ讃岐さぬきから勧請かんじんした金比羅さまがたいへんに繁昌する。
「ま、そんなものさ。金比羅こんぴらから、有馬にすこしばかり落着いて、御多分にもれない、上り大名の下り乞食」
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また彼と同年だった、地主の三男は、別に学問の出来る男ではなかったが、金のお蔭で学校へ行って今では、金比羅こんぴらさんの神主になり、うま/\と他人から金をまき上げている。
電報 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
その前に岩国の錦帯橋きんたいばし余儀よぎなく見物して、夫れから宮島を出て讃岐の金比羅こんぴら様だ。多度津たどつに船が着て金比羅まで三里と云う。行きたくないことはないが、金がないから行かれない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのほか讃岐さぬき金比羅こんぴら、大和の大峰など種々の霊怪を唱え、また稲荷いなり、不動、地蔵をまつり、吉凶を問い病を祈り、よって医者の方角をさし示し、あるいは医薬をとどめ死に至らしめ、蛭子えびす
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ウチ中ノ奴ハ泣イテバカリイル故、思ウサマ小言ヲ言ッテ叩キチラシテ、ソノ晩カラ、水ヲ浴ビテ、金比羅こんぴらヘ毎晩裸参リヲシテ祈ッタ、始終オレガ抱イテ寝テ、外ノ者ニハ手ヲ附ケサセヌ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私と日名子氏とだけが浜脇で下車して、そこの腰掛茶屋で蠅のたかっておるすしと生卵で腹をこしらえ、金比羅こんぴら山の南北両方面にある横穴すなわちカンカンぼとけの横穴およびその附近の横穴を一見した。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その神様の種類からいえば、先ず店の間の天照皇太神宮てんしょうこうたいじんぐうを初めとし、不動明王ふどうみょうおう戸隠とがくし神社、天満宮てんまんぐうえびす大黒だいこく金比羅こんぴら三宝荒神さんぼうこうじん神農しんのう様、弁財天、布袋ほてい、稲荷様等、八百万やおよろずの神々たちが存在された。
朝鮮沿海からドンの音が一掃されたので、最早もはや大願成就……金比羅こんぴら様に願ほどきをしてもよかろう……と思ったのが豈計あにはからんやの油断大敵だった。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
金比羅こんぴらさまへ願をかけたり、重吉が氏神様うじがみさまへ百度を踏んだりした。ようやく命は取り止めたと思った時には乳は止ってしまい、しかたなくアグリは近村の石工の家へ里子に出された。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
御頼み申せし新藤夫婦の事もあれば此度このたび大師迄だいしまでにて別れ申べけれかさねて金比羅こんぴら參詣さんけいの事もあらば丸龜城下なる拙者せつしやたくへ必らず立寄たちよられよ又某事も此後こののち江戸表へいづるならば貴樣の家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
藤作 今度ござらっしゃったのは金比羅こんぴらさんの巫女さんで、あらたかなもんやってな。神さまが乗りうつるんやていうから、山伏やまぶしの祈祷とは違うてな、試してみたらどんなもんですやろ。
屋上の狂人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この男は四国の金比羅こんぴらへ参るとて山田にて別れ、おれは伊勢に十日ばかりぶらぶらしていたり、だんだん四日市の方へ帰って来たが、白子の松原へ寝た晩に、頭痛強くして、熱が出て苦しみしが
喧しく云えば船を動かして、川をのぼったりくだったり、川上かわかみの天神橋、天満橋てんまばしから、ズットしも玉江橋たまえばし辺まで、上下かみしもげてまわっやったことがある。その男は中村恭安なかむらきょうあんと云う讃岐の金比羅こんぴらの医者であった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)