おく)” の例文
『万葉集』の有名なる一例は、いわゆる東歌あずまうたではあるけれども、「ニフナミにわがせをおくりて」とあって、「にひなめ」とは無い。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さきにいはれしごとく二人ふたり勇士ますらをおくりて己が新婦はなよめたすけ給へり、かれらのことばおこなひとにより迷へる人々道に歸りき 四三—四五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そして単に薬餌やくじを給するのみでなく、夏は蚊幮かやおくり、冬は布団ふとんおくった。また三両から五両までの金を、貧窶ひんるの度に従って与えたこともある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
唯継は近頃彼のもつぱら手習すと聞きて、その善きおこなひを感ずるあまりに、良き墨、良き筆、良きすずり、良き手本まで自ら求め来ては、この難有ありがたき心掛の妻におくりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
而して病雀籠樊ろうはんに在り宿志未だ伸びず其備後におくられし所以は以て彼が冲霄ちゆうせうの志を抑留し漸く之を馴致せんが為めのみ。而も彼れ奚ぞ終に籠中の物ならんや。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
同書二巻十五章、元日の条にいわく、この日皇帝以下貴賤男女皆白色をる、白を多祥として年中幸福をけんとこいねがうに因る。またあいおくるに白色の諸品を以てす。
またその上に大阪役者の中村芝雀しばじゃく(後に雀右衛門)を従兄妹いとこにもっていたので、東上のおりには、引幕をおくったり見連けんれんを催したりする、彼女の生活の色彩は、いよいよ華やかであった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
燕王これを聞き、殷に書をおくり、こう金陵きんりょうに進むるを以て辞とす。殷答えて曰く、進香は皇考こうこう禁あり、したがう者は孝たり、したがわざる者は不孝たり、とて使者の耳鼻じびき、峻厳しゅんげんの語をもてしりぞく。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
く我は真意まごゝろを以て微恙びやうある友に書きおくれり。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
勝三郎は病がとかく佳候かこうを呈せなかったが、当時なお杖にたすけられて寺門じもんで、勝久らに近傍の故蹟を見せることが出来た。勝久は遊覧の記を作って、病牀びょうしょう慰草なぐさみぐさにもといっておくった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「遅かつたかね。さあ御土産おみやげです。かへつてこれを細君におくる。何ぞじんなるや」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)