道普請みちぶしん)” の例文
「こうなっては、いよいよしかたがない、道普請みちぶしんの土方にでもなるほかに道はないだろう。」実際こう彼には思われたのであった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
道普請みちぶしんの為に高く土を盛上げた停車場前には、日頃懇意にした多勢の町の人達だの、学校の同僚だの、生徒だのが集って、名残なごりを惜んだ。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
光太郎は提灯をさげてぶらぶらルダンさんの家のほうへ歩いて行ったが、道普請みちぶしんえのあるところへくると、われともなく
黄泉から (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
げんさんがきいたらうだらう氣違きちがひになるかもれないとて冷評ひやかすもあり、あゝ馬車ばしやにのつてとき都合つがふるいから道普請みちぶしんからしてもらいたいね
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この男のうちはどこにあったか知らないが、どの見当けんとうから歩いて来るにしても、道普請みちぶしんができて、家並いえなみそろった今から見れば大事業に相違なかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不断はレウマチスだと称して道普請みちぶしんや橋の掛替工事を欠席しているにもかかわらず、垣も溝も三段構えで宙を飛んだ。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
唯軍事上に使用される程重要な位置を占めていなかったので、史書に現れる機会がなく、わずかに天文の初頃に道普請みちぶしんをした記録が残っているに過ぎない。
尾瀬の昔と今 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「雨は欲しいが、俺たち、道普請みちぶしん荷担にかつぎばかりして歩く組には、雨は敵が出るよりも禁物だ。桑原くわばら桑原、なるべく、あっさり通り雨で欲しいものだ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きっと電車が停電したのでしょうよ。それから彼処あすこ道普請みちぶしんをしていますから車が通らないのでしょうよ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
多助のお話も大分だいぶ長らく続き追々しまいの方に相成りました。さて多助は道普請みちぶしんの金を持って四谷の押原横町へ出かける途中で、呼掛けられましたゆえ立留たちどまって
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
または親子で棒をやや前下まえさがりに、荷物をなるだけうしろのほうへ引取って、かつぐ練習をさせるのもよく見られ、今でも道普請みちぶしん土運つちはこびには、これがふつうである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ふたりは、これをしおに、ここをはなれ、道普請みちぶしん砂利じゃりがつんであるほうへ、あるいていきました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
して見ると今道普請みちぶしんをしている両国筋を通って来たらしいが、あの方角はここから北に当る。
武門ぶもん氏神うぢがみあがめ奉つる事世の人の皆知る處なれば爰に贅言ぜいげんせず因て當時將軍家より社領しやりやう一萬石御寄進きしんありかゝる目出度御神なれば例年八月十五日御祭禮のせつ放生會はうじやうゑの御儀式ぎしきあり近國きんごく近在きんざいより其日參詣なす者數萬人及び八幡山崎淀一口其近邊は群集ぐんじゆ一方ならずよどの城主稻葉丹後守殿より毎年まいねん道普請みちぶしん等丈夫に申付られ當日は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「新茶屋の境から峠の峰まで道普請みちぶしんよなし。尾州からはもう宿割しゅくわりの役人まで見えていますぞ。道造りの見分けんぶん、見分で、みんないそがしい思いをしましたに。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此処にはう夥しい人の足跡が雪の上に残されている、私達も其足跡にいて右側の尾根に造られた新しい道を登った、二人の人足がせっせと道普請みちぶしんをしている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
暫時しばらく土方どかた道普請みちぶしんを見物していたが、急に伯父さんの顔が見たくなった。彼様ああいう顔の人が寝たら如何どういう顔になるだろうと思ったら、土方の喧嘩なんかつまらなくなった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二時頃「右雁坂甲州道、左雁峠一ノ瀬部落マデ三里半」と書いた標木のある処で一休みした。丁度道普請みちぶしんの人夫が二人居たので、山や沢の名を聞いて見たが余り知っていなかった。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
自分が曾て南日なんにち(田部)君と雲取山に登った時、当面に雄偉な状貌を呈している此山を指して、鴨沢から丁度道普請みちぶしんに来た人夫に、あれは大洞山かと聞いても、容易にその意味が通じなかった。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
毎年道普請みちぶしんをするという程あって、少しも荒れていない。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)