迷子まいご)” の例文
迷子まいごとは違う。どうあってもこの道をあるかねばやまぬ。迷いたくても迷えんのである。魂がこちらこちらと教えるからである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、とにかく、このまんまじゃ、どんどん地球から遠去かっていくわけだから、やがてわれわれは宇宙の迷子まいごになってしまうだろうね」
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そりゃあ勿論、おかみさんにも落度はあります。自分の連れている子供を迷子まいごにしたんですから御亭主に対して申し訳ないのはあたり前です。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おじいさんは、それをなかったのでした。西郷さいごうさんのかおも、ちょっとたばかりで、迷子まいごのほうにをとられたのでした。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なに、浪子さんはね、君があまりひま取ったもンだから、おおかた迷子まいごになったンだろうッて、ひどく心配しなすッたンさ。はッはははは」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
誰かが迷子まいごになった場合、家族はいうに及ばず、近隣の者まで動員して、「迷子の迷子の——やい」といって捜して歩く。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
八王子の近くにも呼ばわり山という山があって、時々迷子まいごの親などが登って呼び叫ぶ声を聴くという話もあった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
寝る場所のあてはなし、青息吐息あおいきといき盲飛行めくらひこう、わるくすると先生、雲のなかへ迷子まいごとなってしまいそうだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうかといってこの場合、迷子まいごの迷子の宇津木兵馬やあいと、呼ばわって歩くわけにもゆかない」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
平次はそう言って、迷子まいごでも探すように、提灯ちょうちんを振り照して、淋しい聖堂前へ足を延ばしました。
其処そこにこの山があるくらいは、かねて聞いて、小児心こどもごころにも方角を知っていた。そして迷子まいごになったか、魔にられたか、知れもしないのに、ちいさな者は、暢気のんきじゃありませんか。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なぜなら、迷子まいごになるのが心配だったから。それにしても、腸詰屋の店が彼の目を奪った。
雪片は暮れ残った光の迷子まいごのように、ちかちかした印象を見る人の目に与えながら、いたずら者らしくさんざん飛び回った元気にも似ず、降りたまった積雪の上に落ちるや否や
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夜を知らぬ花の街のおもむきを呈し、子供などはすぐ迷子まいごになりそうな雑沓ざっとうで、それまで東京の小川町も浅草も銀座も見た事の無い田舎者の私なんかを驚嘆させるには充分だったのである。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これではまるで責任というものの概念がどこかへ迷子まいごになってしまうようである。
災難雑考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ええ、これがおくり物ですよ。ぼくはあの小さな迷子まいごの子どもに、あれほどやさしくしてくれたおっかあの所へ、からでは帰れなかった。これがルセットの代わりです。マチアとぼくとでもうけたお金でそれを
「成程、それなら迷子まいごになっても独りで帰って来るね」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
己が迷子まいごになっているのだなんぞと云うなよ。
その晩お庄は迷子まいごになった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しばらく様子をうかがっていると突然万歳と云う声がした。楽隊の音は消されてしまう。石橋の向うで万歳と云う返事がある。これは迷子まいごの万歳である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると、ちいさなおとこが、迷子まいごになったとみえて、かなしそうに、こえをあげていている。それを巡査じゅんさがすかしたり、なだめたりしていたのでありました。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「じゃ、この蛾次郎がじろうが、三つの時に、伊勢詣いせまいりのとちゅうで迷子まいごにしたおまえさんの子であったのか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北国すじの或る大都会などは、ことに迷子まいごというものが多かった。二十年ほど前までは、冬になると一晩ひとばんとしていわゆるかね太鼓たいこの音を聞かぬ晩はないくらいであったという。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
竜之助は、この迷子まいごを、どのように扱うてよいのか当惑して、むなしく頭を撫でながら
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「十九といえば、もう立派な若けえ者だ。いくら江戸馴れねえからと云って、まさかに迷子まいごになりもしめえ。たとい迷子になっても、今まで帰らねえという理窟はねえ。なにか姉夫婦と喧嘩でもして、飛び出したのじゃあねえか」
迷子まいごは、おまわりさんにつれられて、あちらへゆきました。そのあとから、ぞろぞろと人々ひとびとがついてゆきます。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
明りが、倉の中を照らした途端に、桂は桂で、茫然ぼうぜんたるばかりに驚いてしまったし、露八はまた、まるで迷子まいごが親にでも会ったように、彼の胸へ、しがみついてしまった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そら迷子まいごが帰って来た」と云った。あによめはただ「いらっしゃい」と平生の通り言葉寡ことばずくなな挨拶をした。この間の晩一人で尋ねて来た事は、まるで忘れてしまったという風に見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「火事じゃない、迷子まいごだ」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ふーん……さすが口のうめえお米さんも、今日ばかりはグウのも出ないとみえる。そうだろうよ、森啓之助様をだまくらかして、お付人つけびと迷子まいごにさせて、影のような男の後を
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらくすると一人の迷子まいごに出会った。七つばかりの女の子である。泣きながら、人のそでの下を右へ行ったり、左へ行ったりうろうろしている。おばあさん、おばあさんとむやみに言う。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雁か! 迷子まいごのはなれがりか!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)