近侍きんじ)” の例文
足取りも荒々しく消えていったあとから、宿居に当っていた近侍きんじ永井大三郎と石川六四郎がお護り申しあげるように追っていった。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
お蕗はもとより老公と面識があるし、老公の近侍きんじで、また心のうちの人でもある渡辺悦之進わたなべえつのしんもまだそこにいるものと思っている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忠實まめやかつかへたる何某なにがしとかやいへりし近侍きんじ武士ぶしきみおもふことのせつなるより、御身おんみ健康けんかう憂慮きづかひて、一時あるとき御前ごぜん罷出まかりい
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
次の日から廷臣またはローゼンクランツとして近侍きんじの生活がはじまりました。午前八時に土製水瓶アルカザス足付杯キアリースを持ってハムレットの寝室へ行きます。
ハムレット (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
竹腰が怪しい蟇に注意の眼を向けた時、次の室に詰めていた義竜の近侍きんじが十人ばかり、ばらばらと飛び込んで来た。道家と竹腰は近侍の中にとり込められそうになった。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ある日近侍きんじの小姓がゑさを呉れようとする時、隙をねらつて鸚哥は籠の外へ飛び出した。
近侍きんじのもの。侍「ハアー。殿「今宵こよひは十五るの。侍「御意ぎよい御座ござります。殿 ...
昔の大名の心意気 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
孟丙の弟仲壬は昭公の近侍きんじ某と親しくしていたが、一日友を公宮に訪ねた時、たまたま公の目にとまった。二言ふたこと三言みこと、その下問に答えている中に、気に入られたと見え、帰りには親しく玉環ぎょっかんを賜わった。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そして、暫くして王が御殿に出ると近侍きんじの者がいった。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
見られまいとして懸命に面を伏せていた二人は、まさしく侍女のお登代と、そうして誰よりも信任の厚かった近侍きんじの道弥だったのである。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
江戸づめとなってから、癖の悪い馬より手綱たづなの取りにくい万太郎付きの近侍きんじとなっている、相良金吾さがらきんごとよぶ武士でした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
応じて時を移さずに新らしい短檠たんけいを捧げ持ち乍ら、いんぎんにそこへ姿を見せたのは、お気に入りの近侍きんじ道弥ならで、茶坊主の大無たいむである。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
楓の間は密室なので、小姓頭以外のものは近侍きんじしない。上から順にくり拡げて目を通してゆくと、やがて、将軍家の眼に、異様なかがやきが流れた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多くの近侍きんじ旗本はたもとをあいてに、ほがらかな座談ざだん。それがむと、つづみの名人大倉六蔵おおくらろくぞうに、つづみをうたせて聞きとれる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれも御気に入りの近侍きんじの林四門七と、永井大三郎と、石川六四郎と、そうして多々羅たたら半兵衛の四人だった。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
矢倉やぐらへむかった消火隊と、武器をとって討手うってにむかった者が、あらかたである。——で、家康いえやすのまわりには、わずか七、八人の近侍きんじがいるにすぎなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
近侍きんじのものは、そのすきに、家康いえやす屏風びょうぶがこいにして、本丸の奥へと引きかえしていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、機嫌のよい阿波守は、えつをゆるして、当座の手当を与えるように近侍きんじへいいつけた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後に——帰山されてから、宮は、近侍きんじの坊官たちへ、こう語ったと伝えられている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、近侍きんじが彼のみへ、一つの床几を置くと、家康はなお、腰をおろさず
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祐筆ゆうひつがうけとって近侍きんじにわたす。近侍から左京之介の手へ。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「や、や。あれや高俅こうきゅうの養子、高御曹司こうおんぞうし近侍きんじたちだな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その慶喜公の近侍きんじとなった渋沢栄一はどうしたか?
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長廊下をツツツと小走りに来た近侍きんじの者。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、龍山公は、幾たびも、近侍きんじたずねた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところへ、近侍きんじ
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)