軽率けいそつ)” の例文
旧字:輕率
その報告があまり軽率けいそつであったために、彼はすでに死んだものと認められて、わたしがその幽霊になることに決められたのです。
広子はうっかりこう言ったのち、たちまち軽率けいそつを後悔した。けれども辰子はその時にはもう別人べつじんかと思うくらい、顔中に喜びをみなぎらせていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
けれども初枝女史は、ラプンツェルをあきらめを知らぬ女性として指摘して居ります。軽率けいそつにそれに反対したら、叱られます。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私もそう思うが軽率けいそつな恋愛あさりから、人を死なせてしまったという責任を感じるのだ。君の妹の少将の命婦みょうぶなどにも言うなよ。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
クリストフは子供こどもによく見られる思いやりのない軽率けいそつさで、父や祖父そふ真似まねをして、この小さい行商人ぎょうしょうにんをばかにしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「即答すると後悔を残すおそれがある。僕は元来軽率けいそつだからね。それでおおい工夫くふうしているんだよ。答える前にうですねと濁して置いて、凝っと考える」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
議長に於きましては、此の重大問題を即決致しますることは、少こしく軽率けいそつの様にも考へます、よつて五名の調査委員を
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
天女てんにょは、にごりけのない若者わかものこころ感動かんどうするとともに、自分じぶんにもがあったのをさとりました。こんなことになるのも、自分じぶん軽率けいそつからであった。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あなたのお手紙が高尚であるのと、あなたが軽率けいそつな行為をもってわたくしをおはずかしめなさりたくないとおっしゃることを、わたくしは嬉しく存じます。
というのは、女故おんなゆえはずかしさが、裸体で飛び出す軽率けいそつはばからせたのと、一人ぽっちの空気が、隣の事件を決して重大に感ぜしめなかったものらしかった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうも少し引き受けようが軽率けいそつだったな。グリーンランドの成金なりきんがびっくりするほど立派な蛋白石たんぱくせきなどを、二週間でさがしてやろうなんてのは、実際少し軽率だった。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
つけることが出来ました。だが、軽率けいそつに指名することは控えましょう。もう少し待って下さい
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
才気辣腕らつわんの臣をにわかに用いて、軽率けいそつふるきを破り、新奇の政をくは危ういもとを作ろう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはあまりにも軽率けいそつだったと言わなければなるまい。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
夫人は短銃ピストルを握り直したが、僕はなにも持っていなかった。武器を持つのは、いよいよ最後のときに限る。軽率けいそつに武器をとり出すことは、できるだけ避けたい。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何気なくわらって、その人と談してはいましたが、私はひとりではげしく烈しくわたくし軽率けいそつめました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私のここにいますことを聞いて音信たよりをよこしたのですが、他人とは思いませんものの、はじめて聞いた話を軽率けいそつにそのまま受け入れて親しむこともできぬような気になっておりましたのに
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「そんな軽率けいそつなことは言うものではない。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「あまり軽率けいそつなことを召されては」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは多分、そのとき軽率けいそつに叫び声をあげて人々にこの事件を知らせたが最後、結局は彼自身の頭が変になっていたんだなどと後に指摘されることになってはいやだと思ったらしいのである。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、軽率けいそついましめた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)