身投みなげ)” の例文
何でも二、三日前に深川辺の或る川へ女が身投みなげを致してその水死体がどこかの橋の下に流れついたのだそうでございます。
殺された天一坊 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
二十二歳の時、友達が自殺をしたのに感化かぶれて、三階の窓から下の敷石を目がけて身投みなげをした事があつた。
よく身投みなげがあるので其たもと供養くよう卒塔婆そとばが立って居る玉川上水の橋を渡って、田圃に下り、また坂を上って松友しょうゆうの杉林の間を行く。此処の杉林は見ものである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はて、河童かっぱ野郎、身投みなげするより始末の悪さ。こうなっては、お前様、もう浮ぶ瀬はござりませぬ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この時にはふもとの村々には大雷雨があって、物を知れる年寄などは又誰れか池で身投みなげをしてしぬんだな、と噂をするのである。しかしてその旅人は何処いずくへ行ったやら再び姿を見ぬ。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
河岸の石垣の上から穿いて来た赤い鼻緒の日和下駄ひよりげたを穿いているが、これはどうやら身投みなげ女の遺留品らしい。成る程、実験用の犬屋というものはコンナ姿のもんかなと思ったから黙ってうなずいた。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すんでのところ。——つこちるのでも、身投みなげでも、はつときとめる救手すくひては、なんでも不意ふいはう人氣にんきつ。すなはち同行どうかう雪岱せつたいさんを、いままでかくしておいた所以ゆゑんである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人間といふものは、生れて来る時下駄げた穿いて来なかつたせゐか、身投みなげでもして死ぬる時は屹度きつと履物はきものを脱いでゐる。それも其辺そこらへだらしなくり出さないで、きちんと爪先つまさきを揃へたまゝ脱ぎ捨ててゐる。
つゆすくないのを、百間堀ひやくけんぼりあられふ。田螺たにしおもつたら目球めだまだと、おなかくなり。百間堀ひやくけんぼりしろほりにて、意氣いき不意氣ぶいきも、身投みなげおほき、ひるさびしきところなりしが、埋立うめたてたればいまはなし。電車でんしやとほる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「この人通りじゃ身投みなげでもありませんね。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、それは、身投みなげで。」
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
身投みなげだ、たすけろ。」
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)