あしのうら)” の例文
ぎゃくに受くる膝頭ひざがしらのこのたびは、立て直して、長きうねりのかかとにつく頃、ひらたき足が、すべての葛藤かっとうを、二枚のあしのうらに安々と始末する。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
更紗さらさの衣裳の下から見える前足のあしのうらがうす赤い。——この鼠が、これから雑劇の所謂いわゆる楔子せっしを演じようと云う役者なのである。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肋骨あばらの張りぐあいと言ったら、ちょっと考えも及ばないくらいで、あしのうらだってまんまるこくって、歩いても地面じべたにつかないような逸物なんだぜ!
答えると一緒に、奈世は夏でも脱がぬ白足袋たびをぬぎにかかり、うつ伏せになったわしのあしのうらに上手に両足で乗って、交互にゆっくりと踏み始める。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
けれどもその浮橋の上に乗ると、池水がじくじくあしのうらみてそりゃ冷たいんですて。だからその浮橋の下は深い池だということがわかるでしょう。
不思議な国の話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そしてどうかすると、こちらを狂人扱ひにしさうなので、月窓の母親は黙つて帰つたが、途中あしのうらは地に著かなかつた。
幽霊の芝居見 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
そしてクリストフの室にはいりかけると、自分の素足のあしのうらに、いつものなめらかな冷たい床板の感触ではなしに、柔らかにつぶれる生暖かいちりを感じた。
座席の上に横坐りして絹靴下のあしのうらを広く一般に公開し、荷物棚から真田紐さなだひもでつるした一個二フランの貸し枕に河童頭かっぱあたまをもたらせ、すやすやと熟睡する相好は
道形はあっても岩の破片が雪崩れかかっているので、其中へ大股に割り込むとあしのうらが刺されるようだ。それをかばって小走りに駆け下りる、今度は膝頭が痛い。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
へんにぷよ/\したあしのうらの肉とを胸の上に感じると、全く初めての出来事なので、奇妙のやうな、嬉しいやうな心地がして、真つ暗な中で手さぐりしながら頸のあたりを撫でゝやつた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし私にはそれが何の役に立とう? 私はゴロッと仰向きに寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいそのあしのうらを、一つずつ私の眼蓋まぶたにあてがう。快い猫の重量。
愛撫 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
顛倒てんどうして慌てるほど、身体からだのおしに重みがかかる、とその度に、ぐ、ぐ、と泣いて、口から垂々だらだらと血を吐くのが、咽喉のどかかり、胸を染め、乳の下をさっと流れて、仁右衛門のあしのうら生暖なまあたたこう垂れかかる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あしのうらで香ひを聞くもの、それは鼠のみではあるまい。
香ひの狩猟者 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そしてうかすると、此方こつち狂人きちがひ扱ひにしさうなので、月窓の母親おふくろは黙つて帰つたが、道々あしのうらは地に着かなかつた。
〈ファブル・デゾップ〉のあしのうらに荊を刺したライオンのような、見るからに悲壮な歩きかたをしている。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
へんにぷよ/\したあしのうらの肉とを胸の上に感じると、全く初めての出来事なので、奇妙のやうな、嬉しいやうな心地がして、真つ暗な中で手さぐりしながら頸のあたりを撫でゝやつた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし、柔らかいあしのうらの、鞘のなかに隠された、かぎのように曲った、匕首あいくちのように鋭い爪! これがこの動物の活力であり、智慧ちえであり、精霊であり、一切であることを私は信じて疑わないのである。
愛撫 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
どんなあしのうらの丸い犬だろうが、いっさい御免を蒙ろうと肚をきめた。
可哀相かはいさうあしのうらには日があたる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
兎で辛抱出来るものなら、女房かないは取らぬに越した事がない。たつて取らなければならぬとすれば、履だけは穿かせないに限る。履は険呑けんのんな上にあしのうらを台なしにする。
……そのすべてから、むせっかえるような屠殺場の匂いがたちのぼっている。寝台と壁の間の床の上に、裸の人間の足……乾いて小さくしなびた老人のあしのうらがつきだされていた。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
へんにぷよぷよしたあしのうらの肉とを胸の上に感じると、全く初めての出来事なので、奇妙のような、嬉しいような心地がして、真っ暗な中で手さぐりしながらくびのあたりをでてやった。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
金のあしのうらをちらつかす。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
素脚で地べたに立つてゐる私のあしのうらに、まだそこばく残つてゐた真夏の汗臭い余熱ほとぼりを一気に跳ね飛ばされて、初秋の溌剌たる健かさと明徹な冷つこさとが、そこらにふりかかるやうに感じたものだ。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ぬくめよと云うかしこまって裾の方に横臥おうがし懐を開いて彼女のあしのうら
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きんあしのうらをちらつかす
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あしのうらと老人の結婚8・31(夕)
もゝが浮く、あしのうら
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)