ふみ)” の例文
お代の言告口いつけぐちを聞きてよほど心の激昂しけん、足音荒くツカツカと奥へふみ込み来り「コレお国、東京の満から手紙が来たそうだ。その手紙を見せろ」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
平次は覺束ない足をふみ締めて、自分の外した障子を一生懸命元の敷居へはめ込んで居るのです。
と云いながら草鞋穿の足を挙げて、多助が両掌りょうてを合せて拝んでいる手と胸の間へ足を入れて、ドウンと蹴倒しまして、顛覆ひっくりかえる所を土足でふみかけ、一方かた/\の手に抜刀ぬきみを持って
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
両人して刀を以てさん/″\に切破り、足にてふみ破りなどして町に出て見バ人壱人もなし。
と蹴出しの浅黄をふみくぐみ、そのくれないさばきながら、ずるずると着衣きものを曳いて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けすまじとなれもせぬ江戸の夜道は野山より結句けつくさびしく思はれて進まぬ足をふみしめ/\黒白あやめわかしんやみ辿たどりながらも思ふ樣まづしき中にも手風てかぜも當ず是迄そだてし娘お文を浮川竹に身をしづつらつとめを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
駅中えきちゆうは人の往来ゆきゝために雪をふみへしてひくきゆゑ、流水りうすゐみなぎきたなほあぶれて人家に入り、水難すゐなんふ事まへにいへるがごとし。いく百人の力をつくして水道すゐだうをひらかざれば、家財かざいながあるひ溺死できしにおよぶもあり。
「いえ、女ってえものは、またこれがその柔よく剛を制すといった形でね。喧嘩にも傍杖そばづえをくいません、それが証拠にゃあ御覧ごろうじろ、人ごみの中でもそんなに足をふみつけられはしねえもんだ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
熊捕くまとり場数ばかずふみたる剛勇がうゆうの者は一れん猟師れふしを熊のる穴の前にまた
向側が崖沿がけぞいの石垣で、用水のながれが急激に走るから、されてふみはずすうれいがあるので、群集は残らず井菊屋の片側に人垣を築いたため、背後うしろの方の片袖の姿斜めな夫人の目には、山から星まじりに
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)