足拵あしごしら)” の例文
背広の服で、足拵あしごしらえして、ぼう真深まぶかに、風呂敷包ふろしきづつみを小さく西行背負さいぎょうじょいというのにしている。彼は名を光行みつゆきとて、医科大学の学生である。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにわざ/\足拵あしごしらへなどをするひまがあらうとも思へず、浪人者の岩根源左衞門は、相變らずの早寢で、外へ出た樣子もありません。
彼も桶皮胴おけがわどうを着け、足拵あしごしらえをしていた。代二郎を見てとび出そうとし、佐藤と井関がいるので、式台のところで踏みとどまった。
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「おぬしは、覚悟して、旅支度もして来たろうが、わしはふだんのままじゃ。どこかで足拵あしごしらえをせにゃならんが——」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
の好意を無にし給わじとのお心遣から、草鞋をお穿きになったお足拵あしごしらえにも拘らせられず、それに召されて、午前六時四十分に古那屋を御出発になった。
足拵あしごしらえも厳重に、新しい手拭てぬぐいを被り、赤いたすきをかけて、ほの暗い道を、車を押して来るのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
『ええ、十七日の十一時ごろから明け方へかけて土砂ぶり、ナポレオンの兵隊は足拵あしごしらえがよくなかった——おまけに大きな溝がありましてね。いまそこへ行きますが。』
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
厳重にした足拵あしごしらえ、甲斐甲斐かいがいしい旅装束、二日分の糧食を持ち、ポンと庭へ飛び下りた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
脚絆きやはん草鞋わらぢ足拵あしごしらへは、見てくればかり軽さうだが、当分は御膝許おひざもとの日の目せえ、拝まれ無え事を考へりや、実は気も滅入つての、古風ぢやあるが一足毎に、後髪を引かれるやうな心もちよ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「せめて合羽かつぱなと——それに、足拵あしごしらえもいたしたらどうじゃ。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
足拵あしごしらえなどをするひまがあろうとも思えず、浪人者の岩根源左衛門は、相変らずの早寝で、外へ出た様子もありません。
殆んど無反むぞりの長刀を差した一人(それは石黒半兵衛であったが)はべつとして、他の四人はみな足拵あしごしらえをし、鉢巻、たすきという周到な身支度をしていた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
見ると、その又市は、いつの間にか、身軽い武装をして、足拵あしごしらえも、そのまま、戦場へ出るように固めていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此時は足拵あしごしらえがよかった為めに凍傷にもかからずに済んだが、一月の中旬、金峰きんぷ山麓の増富鉱泉から、木賊とくさ峠を踰えて黒平くろべらへ出た時の旅では、何等の用意もしないで
冬の山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
股引ももひき足拵あしごしらえだし、腰達者に、ずかずか……と、もう寄った。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
足拵あしごしらえをし、たすき、鉢巻に、はかま股立ももだちを取って、どんなにでも活躍ができる。が、万三郎はそうする暇がなかった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
のみならずみな非常時らしい足拵あしごしらえをかため、町通りの肉屋、酒屋、寺子屋、何かの細工屋、髪結いどこの軒先にまで、鎗立て、刀掛けが、植え並べてある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一種の洗練を感じさせます——それにしても足拵あしごしらへの嚴重さ。
武蔵が、はて? ——と感じたわけは、怖ろしく敏捷びんしょうなのと、黒扮装いでたちとはいえ、差刀さしものこじり足拵あしごしらえなど浮浪の徒や、ただの野武士とは、見えなかったからである。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喚いたのは役人らしい、はかまをはき足拵あしごしらえをして、刀を差していた。三十二三だろうか、町同心といった風で、眼つきはするどいがにがみばしった顔つきの、なかなか好男子だった。
秋の駕籠 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
周馬は、大丈夫——と見る、ソッと立って、貫之堂つらゆきどうの端に腰をおろして、足拵あしごしらえをなおしにかかった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに侯健こうけんは、旗、よろい、かぶと、兵衣、すべて足拵あしごしらえまでの将士の軍装を調製する。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足拵あしごしらえは、草鞋わらじ股立ももだち、大刀にそりを打たせて、中の二、三名は、槍を横に抱えている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔の見えないほど眉深まぶかな笠をかぶっている。背の高い四十前後の武士である。身なりや足拵あしごしらえから見ると、旅馴れている遊歴の武芸者らしい。後ろから見てもどことなくその体にはすきがない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
服装は雑多だが、足拵あしごしらえは、どれを見ても、軽捷けいしょうに馴れた装いである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
床几しょうぎを借りうけて、足拵あしごしらえを直している侍がいっているのである。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足拵あしごしらえはわらじ膝行袴たっつけ、身軽にしたのはイザという場合の用意だ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当日の進退に、足拵あしごしらえに、また、附近の木立の有無とか、太陽の方向によって、どっちへ敵を立たせて迎えるかなど、すくなくもいきなり行って勝負にかかるよりは、作戦上にも心の余裕にも差があろう。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足拵あしごしらえは、もちろん、草鞋わらじ——すこししめしてあるかに見える。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足拵あしごしらえなど、中食ちゅうじきの折に茶屋などでととのえたがよかろう
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん足拵あしごしらえは長旅に耐えうる麻沓あさぐつだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)