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ごうとう
ふりがな文庫
“
豪宕
(
ごうとう
)” の例文
長さ二十里に余るこの大峡谷は、実に
豪宕
(
ごうとう
)
と偉麗とを合せ有し、加うるに他に容易に見ることを得ない
幽峭
(
ゆうしょう
)
と険怪とに満ちている。
渓三題
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
荒船山の右の肩から奥の方に、雪まだらの
豪宕
(
ごうとう
)
の山岳が一つ、誰にも気づかれぬかに黙然と座している。これが、信州南佐久の
蓼科
(
たでしな
)
だ。
わが童心
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
彼は
毎
(
つね
)
に武蔵野の住民と称して居る。然し実を云えば、彼が住むあたりは、武蔵野も
場末
(
ばすえ
)
で、景が小さく、
豪宕
(
ごうとう
)
な気象に乏しい。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
不思議なことにこれもフーベルマンの
豪宕
(
ごうとう
)
さに及ばず、最近売り出されたハイフェッツのレコードに対しても、吹込みその他に遜色がある。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
恵那峡の
幽邃
(
ゆうすい
)
はともすると日本ラインの
豪宕
(
ごうとう
)
を
凌
(
しの
)
ぐ。ここまで
上
(
のぼ
)
って来なければ木曾川の綜合美は解せられない。すばらしい、すばらしい。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
豪宕
(
ごうとう
)
の性をもちながら、一杖一笠、しずかに自然を友として嘯咏自適、あたかも銀盤に秋水をたたえたような清純な生涯をおくったのである。
西行の眼
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
泰文は中古の藤原氏の勇武をいまに示すかのような
豪宕
(
ごうとう
)
な風貌をもち、声の大きいので
音声
(
おんじょう
)
大蔵といわれていたが、全体の印象は薄気味悪いもので
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この辺は樹も浅く山も低いので、宗矩はそうした建築の中に住んで、せめて、柳生谷の
豪宕
(
ごうとう
)
な
故郷
(
ふるさと
)
の家を
偲
(
しの
)
んでいた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万暦には
豪宕
(
ごうとう
)
の気が漲っているが、成化年製のは気品がない、少し下手だ。成化年は染付のもっとも優れたものとして生まれたことによって有名である。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
牡丹
(
ぼたん
)
は牡丹の妖艶ないのち、唐獅子の
豪宕
(
ごうとう
)
ないのちをこの二つの刃触りの使い方で刻み出す技術の話にかかった。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
社家家宝の雪舟筆の、
豪宕
(
ごうとう
)
の唐風景を描いた屏風が、二人を囲って立っていたが、墨色さえ寒く感じられた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
雑林地帯と違って、下萌えのない芝原に、スクスクと生い立った松の大幹の梢が、
豪宕
(
ごうとう
)
な海風と相接する音を聞くと、言わん方なき爽快と、閑雅にひたされる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
豪宕
(
ごうとう
)
な左団次(今の左団次のお父さん)が時流に合って人気を得ていた時で、その左団次が
座頭
(
ざがしら
)
であり、団十郎が出動し、福助(今の歌右衛門)が
女形
(
おやま
)
だというので
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
前方に上河内、聖が、一つは飽くまで尖鋭に、一つは飽くまでも
豪宕
(
ごうとう
)
に麗らかな春の光の中で白銀に輝いている。背中はじっとりと汗ばんで、雪は相変らずのベタ雪である。
春の遠山入り:(易老岳から悪沢岳への縦走)
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
まるで真紅の鬼芥子の花が、乱れ咲いたか、と思うばかりの大塊——それを葱と一緒に煮ながら食えば、その味は飽くまで
豪宕
(
ごうとう
)
といった趣きだが、また思いもよらず豊
脆
(
ぜい
)
なのに驚く。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
そのせいでもなかろうが、容易に寝つかれない。橋本はもう
鼾
(
いびき
)
をかいている。しかも
豪宕
(
ごうとう
)
な鼾である。
緞子
(
どんす
)
の
夜具
(
やぐ
)
の中から出るべき声じゃない。まして
裾
(
すそ
)
の方には
金屏風
(
きんびょうぶ
)
が立て回してある。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ジーナとスパセニアと馬を並べて、静かな湖の回りを散歩したり、
豪宕
(
ごうとう
)
な
天草灘
(
あまくさなだ
)
の
怒濤
(
どとう
)
を脚下に
見下
(
みおろ
)
して、高原の夏草の間を、思う存分に馬を走らせたり……学校はまだ休暇ではないのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それは層々纍々と盛上って、明るい西空(既に大分夕方に近くなっていた)に高く向い合い、東の
方
(
かた
)
数
哩
(
マイル
)
の
谿
(
たに
)
から野にかけて
蜿蜒
(
えんえん
)
と拡がる其の影の
巨
(
おお
)
きさ! 誠に、何とも
豪宕
(
ごうとう
)
な観ものであった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
太平洋岸の
豪宕
(
ごうとう
)
極まりない浜辺である。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
雪渓は初めてだという実君は頻りに鳶口の苛責を雪に加えている。五、六町登ると谷が左に折れて、突然
豪宕
(
ごうとう
)
極りなき舞台が行く手に開けた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
第一楽章の
幽婉
(
ゆうえん
)
さと第二楽章の優麗さに続いて、第三楽章の燃え立つような情熱と、その
豪宕
(
ごうとう
)
壮快な美しきの対照は見事だ。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
狩野
(
かのう
)
正信、元信などを祖とする狩野派が起り、土佐絵系の復興が見られ、また安土、桃山文化などの新時代の風潮に適応して興った永徳、山楽などの
豪宕
(
ごうとう
)
絢爛な障壁画のある一方
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
赤坂からは、上野公園奥の、谷中墓地までは、だいぶ距離があるので、
大雨
(
たいう
)
には、
神田
(
かんだ
)
へかかると出合ってしまった。冬の雨にも、こんな
豪宕
(
ごうとう
)
なのがあるかと思うばかりのすさまじさだ。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
泰文は中古の藤原氏の勇武をいまに示すかのような
豪宕
(
ごうとう
)
な押出しで、とりわけ声の大きいので
音声
(
おんじょう
)
大蔵といわれていたが、一般に、泰文という人間から受ける印象は底知れない薄気味悪いもので
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
豪宕
(
ごうとう
)
というか、壮大無比というか!
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
況
(
ま
)
して百尺の崖底を大嵐のような音を立てながら地響打って滝のようにたぎり落ちて行く
豪宕
(
ごうとう
)
な峡流の面影は猶更ない。
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
これこそショパンがそのポーランド魂を最もよく発露させた、
豪宕
(
ごうとう
)
なあるいは優雅な国民舞踊である。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
斯く
豪宕
(
ごうとう
)
なる景観は、金峰山にも見られぬ程である、或は霧の間からのみ眺めた私の
贔屓目
(
ひいきめ
)
かも知れぬとは思うが。
思い出す儘に
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
その印象は力と野性の
漲
(
みなぎ
)
りであり、そのヴァイオリンの演奏も、雄渾、
豪宕
(
ごうとう
)
を極め、あるいは細部の彫琢を無視して、全曲の魂と力とを把握せんとするかに見えることがある。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
黒部峡谷が此の如く
豪宕
(
ごうとう
)
であり、此の如く険怪であるのは、
畢竟
(
ひっきょう
)
周囲の地勢が然らしむるものであって、両岸の大堤防としては、最高三千米最低二千一百米
黒部峡谷
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
バッハの無伴奏曲に対するメニューインの演奏は、師ブッシュの手堅さと、その
豪宕
(
ごうとう
)
な魂を
享
(
う
)
け継ぐもので、『無伴奏ソナタ第一番』も、名曲レコードとして数えられるであろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
若
(
も
)
し岩壁の
豪宕
(
ごうとう
)
壮大なる、渓流の奔放激越せる、若くは飛瀑の奇姿縦横なるものを
覓
(
もと
)
めたならば、
瀞
(
とろ
)
八町であろうが、長門峡であろうが、或は石狩川の大箱小箱であろうが
秩父の渓谷美
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
山の姿の如何にも
豪宕
(
ごうとう
)
であること、残雪の極めて多量なること、危険を無理にさえ冒さなければ、誰も持って生れた冒険心を適度に満足せしめ得ること等に原因するものであろう。
越中劒岳
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
中廊下には黒ビンカ或は段々ベツリなど呼ばれる岩壁があり、奥廊下にも薬師岳の下に幾つかの岩壁はあるが、
孰
(
いず
)
れも規模が
稍
(
やや
)
小さいので、下廊下のような険怪と
豪宕
(
ごうとう
)
とを欠いている。
黒部峡谷
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
“豪宕”の意味
《名詞・形容動詞》
豪快で細かい事に拘らないこと。また、そのさま。
(出典:Wiktionary)
豪
常用漢字
中学
部首:⾗
14画
宕
漢検準1級
部首:⼧
8画
“豪宕”で始まる語句
豪宕卓犖
豪宕卓落
豪宕瑰麗
豪宕磊落