識別しきべつ)” の例文
んでいるとはいえ、月もどこかに、星明ほしあかりでは、ただ模糊もことしたものよりほかに下界げかい識別しきべつがつかない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがって、近頃の私自身の気分の悪さについても、早速さっそく思いあたらねばならなかったのであるが、幸か不幸か、私には蠅の雌雄しゆう識別しきべつする知識がなかったのである。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
われわれは問題の大小を識別しきべつして、いつでも小問題をごまかしているが、花前は問題の大小などいう考えがはじめからなくて、なにごともごまかすことが絶対ぜったいにできない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
編者未だ識別しきべつすることあたざれどもしはたしてしんならしめば吉宗よしむねぬしが賢明けんめいなるは言計いふばかりもなくにせにせとして其のあくあばかんすきぞくめつするは之奉行職の本分ほんぶんなれば僞者にせものの天一坊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さういつても實際じつさい巡査じゆんさにはくぬぎほか雜木ざふきとを明瞭めいれう識別しきべつなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「味方識別しきべつをつけ忘れていた、と言うらしいのだよ」
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
その中に主人としていて、それを正しく識別しきべつし得るような中心者だったら、たとえ二代目三代目でも、短時日に没落から消滅へ、人為的な運命を、みずから早めることはしないであろう。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかあまりに瘡痍きずそのもの性質せいしつ識別しきべつした醫者いしやは、かれその果敢はかないこゝろうつたへる餘裕よゆうあたへずにかれあたまからおさへやう揶揄からかうた。かれ其處そこ何物なにものをもないでにげるやうに珊瑚樹さんごじゆ木蔭こかげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ようは、今しがたの停電は二人の男が変電所の一千ヴォルトの電極に触れて感電死したことによるもので、二人共全身黒焼けとなり一見いずれが誰と識別しきべつし難いが、一人は勤務中であった技手土岐健助
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)