誓言せいごん)” の例文
サン やい、グレゴリー、誓言せいごんぢゃ、こちとらは石炭コールなんぞはかつぐまいぞよ、かりにも。(不面目な賤しい仕事しごとなんぞはすまいぞよ)
女が真面目まじめで、この誓言せいごんめいた事を言うのが、男には異様に感ぜられた。今の刹那の心持ちでは、男のためには、女はたれでも好いのである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
すなわち、彼が望みの宝をおつかわしになりましたに因って、是非に及ばず、誓言せいごんの通り、娘を波に沈めましたのでござります。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つには誓言せいごんの手前もある。そうしてまた一つには、——己は復讐を恐れると云った。それも決して嘘ではない。しかしその上にまだ何かある。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かくて直ちに清兵衛が嫡子を召され、御前においてさかずきを申付けられ、某は彼者かのものと互に意趣を存ずまじきむね誓言せいごんいたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それは手前が本尊阿弥陀如来の前で誓言せいごん立てても苦しゅうござらぬ。たとい何人なんぴとがなんと申そうとも、左様の儀は……
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だがやくそくも誓言せいごんもいっこう役には立たなかった。かれはちっとも早く帰ったことはなかった。一ぱいでもお酒がのどにはいったら、もうめちゃめちゃであった。
葉子はすぐいらいらして、何事もあばかないではおくものかと心の中で自分自身に誓言せいごんを立てながら
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
宙天ちゅうてんの三日月へ合掌して、こう誓言せいごんをたてた青年の発足を、彼はいま、新たに胸へ呼び返していた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その証拠にお前に見せる物がある。この手紙の一束を見てくれい。(忙がしげに抽斗ひきだしを開け、一束の手紙を取りいだす。)恋の誓言せいごん、恋の悲歎ひたん、何もかもこの中に書いてはある。
己は只即坐に立ち上がつて、さつき気にした、あの窓の鎖してある部屋に往けば好い。そこには寝台の上に眠つてゐる女があると云ふのだ。それに就いて己は誓言せいごんをさせられた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
それから窓の扉も、戀人同士が囁き交す、誓言せいごんの出口に間に合ふだけの幅を殘してめてしまひ、私はこつそり椅子に歸りました。するとそのときその二人づれが這入つて來たのです。
そしてあなたのあの心強い誓言せいごんを得たのだ。あなたはそれを忘れはなさるまい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
どうぞ誓言せいごんをして下さい。事によつたら却つてそれが本当だかも知れません。わたしは知らないのですが、わたしは人を殺したのです。誤解してはいけませんよ。それはあそこでしたのです。
まこと然らば誓言せいごんを立つべしと、深く詩を好ませたもう余りにせまって御尋ねあると、文時ここに至って誓言は申上げず、まことには文時が詩は一段と上に居り候、と申して逃げ出してしまったので
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
柳田の挙動に気を呑まれたというわけではなかろうが、最初の約束に、一度限り見せて進ぜる、いかにも一度限り、苦しくない——という誓言せいごんが物を言って、そこでそれ以上の註文は出せないらしい。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
第七十八回 チベット人の誓言せいごん
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ヂュリ 誓言せいごんにはおよびませぬ。また誓言せいごんなさるなら、わたしが神樣かみさまともおもふおまへをおけなされ、すればお言葉ことばしんじませう。
しかもこの己の恐怖は、己が誓言せいごんをしたあとで、袈裟が蒼白い顔に片靨かたえくぼをよせながら、目を伏せて笑ったのを見た時に、裏書きをされたではないか。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「武士は誓言せいごんをしたからは、一命をもすてる。よしや由緒があろうとも、おぬしの身に着けている物の中で、わしが望むのは大小ばかりじゃ。ぜひくれい」
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
こうして誓言せいごんを立てた以上は、かならず嘘はつかねえから、まあ安心して話して聞かせるがいいじゃあねえか
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは本統ほんとうはクララが始めから考えていた事なのだ。十六のとしから神の子基督キリスト婢女しもべとして生き通そうと誓った、その神聖な誓言せいごんを忘れた報いに地獄に落ちるのに何の不思議がある。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「どこにこの誓言せいごんが行われたか。——わしは今もって、この中国七州しか持たぬ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたくしはただあなたがいかなる権力けんりょくによって、このご命令めいれいをお発しになったか、それさえ承知しょうちいたしますれば、さっそくおおせつけに服従ふくじゅういたしますことを、つつしんで誓言せいごんいたしまする」
けさわしに対して誓言せいごんをしたのだから。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あゝ、おれいままでにこひをしたか? やい、まなこよ、せなんだと誓言せいごんせい! 今夜こんやといふ今夜こんやまでは、まこと美人びじんをばなんだわい。
本人身の上に別状なきことは武士の誓言せいごん相違あるまじく候、菊園一家の者に心配無用と御伝え被下度くだされたく、貴殿にも御探索御見合せ被下度候、まずは右申入度、早々。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
して見れば、誓言せいごんまでしたあの人が、忍んで来ないと云う筈はない。——あれは風の音であろうか——あの日以来の苦しい思が、今夜でやっと尽きるかと思えば、流石さすがに気の緩むような心もちもする。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)