虎視眈々こしたんたん)” の例文
だから海底超人の母国は、この宇宙に一つの遊星となって、いまも虎視眈々こしたんたんとして、第二の植民をおこなおうとしているかもしれない
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
東国、北国の源氏が虎視眈々こしたんたんと都に目を向け、牙をみがいているというのに、これは余りにも呑気のんきな、時局認識に乏しい平家の有様であった。
孤君信長をめぐって虎視眈々こしたんたんな一族がたくさんいた。それが、叔父だの兄弟だの身寄りだのという者だけに、荊棘けいきょくひらくのも、敵以上であった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いて飛付いたのは、先刻さっきから虎視眈々こしたんたんとして、一座をねめ廻していた石原の利助、縁側へ飛出して、曲者くせものの後から欄干を越えようとする前へ
出奔しゅっぽんした前太子蒯聵は晋の力を借りて衛の西部に潜入せんにゅう虎視眈々こしたんたんと衛侯の位を窺う。これをこばもうとする現衛侯出公は子。位をうばおうとねらう者は父。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
はじめから、そのつもりで両方が虎視眈々こしたんたん、何か「きっかけ」を作ろうとしてあがきもがいた揚句あげくの果の、ぎごちないぶざまな小細工こざいくに違いないのだ。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
上平館かみひらやかたの一間からこの遊魂は、長浜の人里を慕うて下りて行かんとしてここまで漂うて来て、ここで暫く待機の姿勢をとって、そうして、虎視眈々こしたんたんとして
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それにピッタリ当てはまっているのだから、神尾喬之助、くるったと見せて、狂ったどころか、内実は虎視眈々こしたんたん、今にも、長じんいて飛来ひらいしそう……。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかるに忽ち足利尊氏たかうじ、反骨を抱いて虎視眈々こしたんたん、とうとう機を見てそむき去り、ふたたび乱世戦国となったが、尊氏の最も恐れたのは、この書倶係震卦教ぐけいしんけきょうだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
血だ! ぷくぷくと黒い血がいたよ牛の血が! 血は、見るみる砂に吸われて、苦悶の極、虎視眈々こしたんたんと一時静止した牛が、悲鳴し怒号し哀泣し——が、許されっこない。
しかるに支那にしてもし今の状態を永く続けるならば、その間には虎視眈々こしたんたんとして、野心をぞうし功名心を有する列強が、その機に乗じて種々なる暗中飛躍を試みることになるかも知れぬ。
剣の立つたくましい侍が五人一隊をなして、左膳からは乾雲丸を、栄三郎からは坤竜丸を取りあげんものと、虎視眈々こしたんたんと暗中に策動しつつあるに相違ないのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ですから武器、戦車、囚人車めしゅうどぐるまなど、武庫ぶこのうちに山とたくわえておることからみても、たえず虎視眈々こしたんたんと、わが水滸すいこの要害をうかがっているものとしか思われませぬ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お松は青くなって立ちすくみます。後ろからは虎視眈々こしたんたんたるガラッ八の眼。
しかも都の北には、西涼せいりょうの憂いがあるし、東には劉表りゅうひょう、西には張繍ちょうしゅう、おのおの、虎視眈々こしたんたんと、この曹操が脚を失って征途につかれるのをうかがっているところだ……
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後ろからは八五郎の眼が虎視眈々こしたんたんとしております。
おそらく、伊賀方面も、在所ざいしょ在所の郷武者まで、わき返っているのだろう。——そして北条方の者、宮方の者、おのおの虎視眈々こしたんたんと、めあい出したにちがいない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
英、仏、露、など諸外国の虎視眈々こしたんたんと日本の隙間をうかがっていることを考えてみたら慄然りつぜんとしようが。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
参遠駿さんえんすんの自領に接続している甲信二州への版図拡張はんとかくちょうは、長いあいだ彼の虎視眈々こしたんたんのものであった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうなると、ひそかに虎視眈々こしたんたんとしていた徳川家康とくがわいえやすも、いきおいかれのまえに意地いじッぱってはいられないので、石川数正いしかわかずまさ戦捷せんしょうの使者に立てておくりものをしてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに閣下の胸三寸にもおありでしょうが、要するに、関羽が油断しないのは、陸口の堺に、あなたのような呉でも随一といわれる将軍が虎視眈々こしたんたんと控えておるからです。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また幕府内でも、高時をはずせば、その執権の職には、一族みな虎視眈々こしたんたんで、たちまち、内紛のおそれがあり、そのもつれは、今日までたびたび、くりかえしてきたのであった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「玄徳に二心はないかもしれません。しかし玄徳の幕下は皆、この蜀に虎視眈々こしたんたんです。何とか口実を設けて今のうちに荊州軍を引き揚げさせるご工夫をなされては如何ですか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尊氏の弟直義の一勢が、久原川の危殆きたいに陥ちたかたちなので——もし尊氏が、それの救援にうごいたら、ただちに、陣の側面を突いてやろうと、虎視眈々こしたんたんでいたものだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋島から兵庫港に上陸した西軍は、一ノ谷に城廓をかまえて、虎視眈々こしたんたんたるものがある。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「したが、火だねは絶えず、近ごろまたも、桜山につづいて、備前には児島三郎高徳こじまさぶろうたかのりなる者が起り、瀬戸ノ海を隔てながらも大塔ノ宮、正成らとかんを通じ、虎視眈々こしたんたん、機をうかがっておりますそうな」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互いに虎視眈々こしたんたんと境をせめぎあっていたのでもある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)