荒野あらの)” の例文
時うつりて生出いき(い)づ。をほそくひらき見るに、家と見しはもとありし荒野あらの一四二まい堂にて、黒き仏のみぞ立たせまします。
次の「荒野あらのに呼ばわる者の声す、『主の道を備えその道筋をなおくせよ』」というのがイザヤ書四十章三節の言葉です。
そして、そのうちに手足てあしこごえて、はらいて、自分じぶんは、このだれもひととおらない荒野あらのなかたおれてんでしまわなければならぬだろうとかんがえました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ方角はうがくたしかでない。旅馴たびなれた野宿のじゆく覺悟かくごで、かすか黒雲くろくもごとひくやま四方しはうつゝんだ、はひのやうな渺茫べうばうたる荒野あらのあしにまかせて辿たどること二里にりばかり。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われ疲れ、彼も我も定かに路をしらざれば、われらは荒野あらのの道よりさびしき一の平地ひらちにとゞまれり 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その日の午後素戔嗚は、更に葦原醜男をつれて、島の西に開いた荒野あらのへ、狐や兎を狩りに行つた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まだ小學校に上つて間もない時分、年上の惡少にそそのかされて、春の末、荒野あらのの岡に行つた。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
信濃しなぬなる須賀すが荒野あらのにほととぎすこゑきけばときぎにけり 〔巻十四・三三五二〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
森か、荒野あらのか、海のはてか……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さらばこの広き荒野あらの
海を越え荒野あらのをよぎり
オリンピック東京大会讃歌 (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
なまぐさき荒野あらのなか
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
十勝とかち荒野あらの住家すみかさだめん
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
さむさは、つのるばかりでありました。そして、はらはだんだんいてきました。もはや、この荒野あらのなかで、のたれにをするよりほかになかったのでした。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
イエス彼に云ひけるは、「ユダよ。我誠になんぢを知る。爾は荒野あらの獅子ししよりも強し。ただ小羊こひつじの心を忘るるなかれ。」ユダ、イエスの言葉を悦べり。されどその意味をさとらざりき。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いきなりバプテスマのヨハネが出て罪の赦しを得さする悔い改めのバプテスマをべ伝え、イエスの洗礼、荒野あらのの試み、そこから帰ってヨハネが捕われた後伝道を開始されたと、簡潔に
荒野あらのの中の小き停車場ステイシヨン
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)