ぬが)” の例文
かく言ひつつ彼は艶々つやつやあからみたる鉢割はちわれの広き額の陰に小く点せる金壺眼かねつぼまなこ心快こころよげにみひらきて、妻が例の如く外套がいとうぬがするままに立てり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
腕を隠せし花一輪削り二輪削り、自己おのが意匠のかざりを捨て人の天真の美をあらわさんと勤めたる甲斐かいありて、なまじ着せたる花衣ぬがするだけ面白し。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
衣物きものれたやうだな、ぬがせたらよかつぺ、それにひどよごれつちやつたな」亭主ていしゆはいつてまくつた蒲團ふとんあてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
改むるに金子二十兩有て着類きるゐは見えず是は賣代うりしろなせしやと女房を見れば貧家に似合にあはず下に絹物きぬものを着込居るゆゑぬがせて見れば男小袖こそでなり是はと役人共も思ひすぐさま手配をなしてしやう兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぬがぬうち穀屋へ行てやうか扨々はらへつたお峰や一寸一杯喰込かつこんで行うとこしを掛け居處ゐるところへ當宿の村役人段右衞門と岡引をかひき吉藏案内あんないにて八州まはりの役人どや/\と押來おしきた上意々々じやうい/\と聲をかけ飛懸とびかゝつて富右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぬが古袷ふるあはせ一枚ぜに三百文與へて何國いづくへなりと出行いでゆくべしと勘當かんだうなしければ番頭若い者等種々いろ/\詫言わびごとすると雖も吉右衞門承知せず其儘そのまゝ古河へ歸りけり依て吉之助は今更いまさら途方とはうくれ此體このなりにては所詮しよせん初瀬留にもあはれず死ぬより外に詮術せんすべなしと覺悟かくご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)