ぬひ)” の例文
目も醒むるやうな藤納戸色の着物の胸のあたりには、五色の色糸のかすみ模様のぬひが鮮かだつた。そのぼかされた裾には、さくら草が一面に散り乱れてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
みどりかみかつらまゆ皓齒かうしあたか河貝かばいふくんで、優美いうび端正たんせいいへどおよぶべからず。むらさきかけぬひあるしたうづたまくつをはきてしぬ。香氣かうき一脈いちみやく芳霞はうか靉靆たなびく。いやなやつあり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下図は作らずにあたまから布へ打附ぶつつけぬひを遣つて居たよ。巴里パリイでもその意匠を仕立屋タイユールへ売つて喰つてたらしい。しきりに日本にきたがつて居た。一寸ちよつと見識もある変つた女らしかつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
だから、あいつが御用ごようになつて、茶屋の二階から引立ひつたてられる時にや、捕縄とりなはのかかつた手の上から、きり鳳凰ほうわうぬひのある目のさめるやうな綺麗きれい仕掛しかけ羽織はおつてゐたと云ふぢやないか。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
垂れて音なきぬひの花、またひだごとに
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
銀糸ぎんしで置いたぬひそで
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
きらびやかなぬひのある桜の唐衣からぎぬにすべらかし黒髪が艶やかに垂れて、うちかたむいた黄金の釵子さいしも美しく輝いて見えましたが、身なりこそ違へ、小造りな体つきは、色の白いうなじのあたりは
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
水いろの繻子しゆすぬひせし細き靴のもとにしてにれの花踏む
きんぬひあるけた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
青き枝こがねのぬひをおける枝しゆを盛れる枝雨の流るる
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
江戸紫に置くぬひ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
絹物のぬひの図案のオリヂナルに富んで居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)