絶壁ぜっぺき)” の例文
ガンたちは、うんよく、けわしい絶壁ぜっぺきの下に、みんながいられるくらいの砂地すなじを見つけました。前には川がゴウゴウと流れています。
どうして、この絶壁ぜっぺきりるかと見ていると、宮内は、さすがに武士ぶしだけに、いざとなると、おそろしいほど胆気たんきがすわっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこから、さらにあるいて、海岸かいがんほうますと、人々ひとびとあつまって、たか絶壁ぜっぺきうえゆびさしてはなしをしていました。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、谷の入り口から四里の間と云うものは、全くみちらしい路のないおそろしい絶壁ぜっぺきの連続であるから、大峰修行の山伏やまぶしなどでも、容易にそこまでは入り込まない。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が次の瞬間しゅんかんに、車は急転直下、直角にちかい絶壁ぜっぺきを、素晴しい速力ですべり落ちてきます。背中を丸くして、横棒にかじりついていても、こしが浮くすさまじさです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ムッとした紀昌を導いて、老隠者ろういんじゃは、そこから二百歩ばかりはなれた絶壁ぜっぺきの上まで連れて来る。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ぼくは今、何十メートルとも知れぬ絶壁ぜっぺきの、とっぱなに立っているのですよ。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは聖橋ひじりばしと、お茶の水との中間にあたる絶壁ぜっぺきの、草叢くさむらの中からだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なるほど、なにごとにしても、理をきわめんとすれば心理学の原理に入らざるを得ないから、容易よういならざる専門的研究となるが、吾人ごじんの平常むべき道はやぶの中にあるでなし、絶壁ぜっぺき断巌だんがん沿うでもない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
きもも太いが手ぎわもいい、たちまち三じょうあまりの絶壁ぜっぺきの上へみごとにぐりついて、竹生島ちくぶしまの樹木の中へヒラリと姿をひそませてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、絶壁ぜっぺきにたたきつけられて、むざんな死にかたをしたものもあれば、アザラシのえじきになったものもあります。
それから地蔵河原じぞうがわらを渡渉して、最後に三の公川に達するまで、川と川との間の路は、何じょうと知れぬ絶壁ぜっぺきけずり立った側面をうて、ある所では両足を並べられないほどせま
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ノアノパリの絶壁ぜっぺき上に立ち、世界で三番目に強いと言われる風速何十メエトルかの突風とっぷう、顔をたえずたたかれ上衣うわぎをしょっちゅうくられているような烈風を受けつつ、眺めた景色は髣髴ほうふつ
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
はっとして、目をあげてみますと、じぶんのまっ正面しょうめんに、しかもたった二メートルのはなさきに、ものすごい絶壁ぜっぺきが、きり立っているではありませんか。
呼ぶこえ、おと。船のなかにはひとりの若い漁師りょうしが、櫓柄ろづかをにぎって、屏風びょうぶのような絶壁ぜっぺきをふりあおいでくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)