町並まちなみ)” の例文
震災前しんさいぜんには、この辺は帆村の縄張なわばりだったが、今ではすっかり町並まちなみ一新いっしんしてどこを歩いているものやら見当がつかなかった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
電車が通るようになれば自然町並まちなみも変るし、その上に市区改正もあるし、東京がじっとしている時は、まあ二六時中にろくじちゅう一分もないといっていいくらいです
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
きりの花のく時分であった。私は東北のSという城下町の表通りから二側目ふたかわめ町並まちなみを歩いていた。案内する人は土地の有志三四名と宿屋の番頭であった。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私の村は県道に沿うた町並まちなみで、山も近くにあるのはほんの丘陵であったが、西に川筋かわすじが通って奥在所おくざいしょは深く、やはりグヒンサンの話の多い地方であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
をとこ塵塚ちりづかさがす黒斑くろぶちの、ありてようなきものともゆべし、此界隈このかいわいわかしゆばるゝ町並まちなみ息子むすこ生意氣なまいきざかりの十七八より五にんぐみにんぐみこししやく八の伊達だてはなけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
腰にはいかめしき刀を差し、時々は扇子せんすかなめ柄頭つかがしらのあたりに立てて、思い出したように町並まちなみや、道筋、それから仰いで朧月おぼろづきの夜をながめているのは、いつのまにこの地へ来たか
目的めあて海岸かいがん——某地ぼうちくと、うみ三方さんぱう——見晴みはらして、旅館りよくわん背後うしろやまがある。うへ庚申かうしんのほこらがあるとく。……町並まちなみ、また漁村ぎよそん屋根やねを、隨處ずゐしよつゝんだ波状はじやう樹立こだちのたゝずまひ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寝しずまった町並まちなみを、張りのある男声の合唱が鳴りひびくと、無頓着むとんじゃくな無恥な高笑いがそれに続いた。あの青年たちはもう立止る頃だとクララが思うと、その通りに彼らは突然阪の中途で足をとめた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
麻布あざぶ聯隊れんたいより立派でない。大通りも見た。神楽坂かぐらざかを半分に狭くしたぐらいな道幅みちはば町並まちなみはあれより落ちる。二十五万石の城下だって高の知れたものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
町並まちなみから走り出でる者。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
終点に近いその通りは、電車へ乗り降りの必要上、無数の人の穿物はきもので絶えず踏み堅められる結果として、四五年このかた町並まちなみが生れ変ったように立派に整のって来た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)