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こうかい
ふりがな文庫
“
狡獪
(
こうかい
)” の例文
お佐代さんが茶を
酌
(
く
)
んで出しておいて、勝手へ下がったのを見て
狡獪
(
こうかい
)
なような、滑稽なような顔をして、孫右衛門が仲平に尋ねた。
安井夫人
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
信西入道はあくまでも
狡獪
(
こうかい
)
なる態度を取って、前度の乱にはつつがなく逃れたが、後の平治の乱には彼が正面の敵と目指された。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
所々でこぼこして上の方に醜い
皺
(
しわ
)
の寄ってる変な額が出てきた。鼻は
嘴
(
くちばし
)
のようにとがった。肉食獣のような
獰猛
(
どうもう
)
狡獪
(
こうかい
)
な顔つきが現われた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
この手段甚だ
狡獪
(
こうかい
)
なるを以て往々力を費さずして佳句を得ることありといへども、老熟せざる者は拙劣の句をものして失敗を取ること多し。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
かれの
狡獪
(
こうかい
)
なそら
脅
(
おど
)
しは
効果
(
こうか
)
がなかった。
火縄
(
ひなわ
)
はいまの
格闘
(
かくとう
)
でふみけされてしまったので、
筒口
(
つつぐち
)
をむけてもにわかの役には立たないのである。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
相手を袋の鼠の、しかも子供と
侮
(
あなど
)
ってか、シムソンは彼の
企
(
たくら
)
みを、さも自慢らしく述べ立てました。何という
狡獪
(
こうかい
)
さ。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
而
(
しか
)
も彼は立法者であるから、
狡獪
(
こうかい
)
にもこれを享楽のためとは言わずして、婦人研究のためと称しておった。果して婦人研究か非か、とにかく、その結果は
如何
(
いかん
)
。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
ころんでも只は起きぬ
狡獪
(
こうかい
)
さとで鳴らした人間だけあって、現在は、浮世ばなれた、
暢気
(
のんき
)
らしい日を送っていてもなかなかどうして、油断も隙もある男ではない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それにしては現実の背景が少し貧弱で、何か物足りない感じであった。やがて圧倒的な、そして相当
狡獪
(
こうかい
)
な彼の激情に動かされて、とにかく葉子は帰ることに決めた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
狡獪
(
こうかい
)
で片意地な道化者のフョードル・パーヴロヴィッチは、彼自身の言いぐさのように『世の中のある種の事柄に対しては』なかなかずぶとい気性を持っていたけれど
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
事によると、汝はそれ丈の証明では不充分であるというかも知れぬ。成るほど
狡獪
(
こうかい
)
なる霊界人が、欺瞞の目的を
以
(
もっ
)
て、細大の歴史的事実を
蒐集
(
しゅうしゅう
)
し得ないとは言われない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
相当な
理窟
(
りくつ
)
もあった。或程度の手腕は無論認められた。同時に何らの
淡泊
(
たんぱく
)
さがそこには存在していなかった。下劣とまで行かないでも、
狐臭
(
きつねくさ
)
い
狡獪
(
こうかい
)
な所も少しはあった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
政見を欠くことにおいて浅薄であり、国民の意志を眼中に置かないことにおいて専制的であり、政敵を悪罵し
狡獪
(
こうかい
)
なる御用党を曲庇することにおいて野卑であると思います。
選挙に対する婦人の希望
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
軽浮
(
けいふ
)
にして
慓悍
(
ひょうかん
)
なるもの、
慧猾
(
けいかつ
)
にして
狡獪
(
こうかい
)
なるもの、銭を愛するもの、死を恐るるもの、
愧
(
はじ
)
を知らざるもの、即ちハレール、セイーの徒の如きは、以て革命家の器械となるを得べし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
狡獪
(
こうかい
)
な眼附だと思い、なにか用ですか、と彦太郎は訊いた。早速だが、と新聞記者は鬚のない顎を捻りながら、先達、君の提出した歎願書は誰が書いたのか聞かして欲しいのだ、と云った。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
漸
(
ようや
)
く
狡獪
(
こうかい
)
陰険の風を助長するのみ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
と、
燕作
(
えんさく
)
はソロソロ
狡獪
(
こうかい
)
な
本性
(
ほんしょう
)
をあらわして、なれなれしく竹童の
帯
(
お
)
びている
般若丸
(
はんにゃまる
)
の
鍔
(
つば
)
や
目貫
(
めぬき
)
をなでまわしながら
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あるいは
狡獪
(
こうかい
)
となりあるいは猛烈となり、有害にまた同時に
獰猛
(
どうもう
)
となって、悪徳の針をもって社会の秩序を攻撃し、罪悪の
棍棒
(
こんぼう
)
をもって社会の秩序を攻撃する。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
女はただ「存じません、存じません」と云った。玄機にはそれが甚しく
狡獪
(
こうかい
)
なように感ぜられた。玄機は床の上に
跪
(
ひざまず
)
いている女を押し倒した。女は
懾
(
おそ
)
れて目を
睜
(
みは
)
っている。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
何か
狡獪
(
こうかい
)
な敗徳漢のように思われてならなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あのおやじから本多
正純
(
まさずみ
)
や、
帷幕
(
いばく
)
の旧臣をひいたら、何が残る。
狡獪
(
こうかい
)
と、冷血と、それと多少の政治的な——武人が持たぬ才を少し持っているというに過ぎない。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喚
(
わめ
)
きたてて、暗に、事あれかしな群集の心理を
煽動
(
せんどう
)
し、かたがた、自己の目的をとげようという四郎の
狡獪
(
こうかい
)
な陰険なゆすりの手段は、思わず身の毛をよだたせる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……だが、頼朝が天下を取ってからは、あのおべッか者は、一人として
噯
(
おくび
)
にもさようなことはいい出さぬ。
狡獪
(
こうかい
)
な頼朝は口を拭いて、知らぬ顔にこの言葉を
葬
(
ほうむ
)
ろうとしている——。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いくら
狡獪
(
こうかい
)
な
家康
(
いえやす
)
でも、
策
(
さく
)
をもって
乗
(
の
)
せれば、乗らぬものでもございますまい、じつはその用意のために、
早足
(
はやあし
)
の
燕作
(
えんさく
)
を
物見
(
ものみ
)
にやッてありますゆえ、やがてそろそろここへ帰るじぶん……
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
景時の人物がまともだったら、相互の
倖
(
しあわ
)
せだったろうが、武あり智あり弁舌ありという傑物で、大日本史の語をかりていえば、
狡獪
(
こうかい
)
にして陰険、しかも和歌を
嗜
(
たしな
)
むという複雑な才人である。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狡獪
(
こうかい
)
な奉行の
程
(
てい
)
は、またそこを見抜いていて
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“狡獪”の意味
《名詞》
悪賢く狡いこと。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
狡
漢検1級
部首:⽝
9画
獪
漢検1級
部首:⽝
16画
“狡”で始まる語句
狡猾
狡
狡智
狡黠
狡知
狡滑
狡猾者
狡兎
狡童
狡才