烟草盆たばこぼん)” の例文
着したる旅の侍士さふらひ一人入來り其方へ少々尋ね度仔細しさいありと申にぞ名主用右衞門は何事なるやと思ひ早速さつそく座敷へ通して茶烟草盆たばこぼん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お光はじいと舟に乗って加藤洲かとうすに行って、それから潮来に寄って、用を達して帰りかかって居ると、隣に人待顔ひとまちがおに立派な毛氈もうせん敷いて烟草盆たばこぼん茶盆まで揃えた舟があって
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
烟草盆たばこぼんのおよっちゃんが真面目腐って、貴方あなた、御飯をお上ンなさいなと云う。アイと私が返事をする。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
でふ座敷ざしき借切かりきつてゐると、火鉢ひばちはここへくよ、烟草盆たばこぼんくよ、土瓶どびんしてやる、水指みづさしもこゝにるは、手水場てうづばへは此処こゝからくんだ、こゝへ布巾ふきんけてくよ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
行火あんくわあたるならいつでもとこなかれていてはらないぞえ、さんは臺所だいどころのもとをこゝろづけて、旦那だんなのおまくらもとへはいつもとほりおわかしにお烟草盆たばこぼんわすれぬやうにして御不自由ごふじいうさせますな
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でう座敷ざしきに六まい屏風びやうぶたてゝ、おまくらもとには桐胴きりどう火鉢ひばちにお煎茶せんちや道具だうぐ烟草盆たばこぼん紫檀したんにて朱羅宇しゆらう烟管きせるそのさま可笑をかしく、まくらぶとんの派手摸樣はでもやうよりまくらふさくれなひもつねこのみの大方おほかたあらはれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
中々なか/\とゞいたもので、土間どまひろく取つて、卓子テーブルに白いテーブルかけかゝつて、椅子いすりまして、烟草盆たばこぼんが出てり、花瓶くわびんに花を中々なか/\気取きどつたもので、菓子台くわしだいにはゆで玉子たまごなにか菓子がります
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)