澱粉でんぷん)” の例文
蛋白質と澱粉でんぷんと脂肪と食塩と水とビタミンさえあれば、味などはどうでもかまわぬと言われたら、どんなにか物足らないであろう。
「心理試験」序 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
近来きんらい澱粉でんぷん製造の会社が設立せられ、この球根を集めくだきそれを製しているが、白色無毒な良好澱粉が製出せられ、食用にきょうせられる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
淡い甘さの澱粉でんぷん質の匂ひに、松脂まつやにらん花を混ぜたやうな熱帯的な芳香ほうこうが私の鼻をうつた。女主人は女中から温まつた皿を取次いで私の前へ置いた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
仰臥漫録ぎょうがまんろく』に「顕微鏡にて見たる澱粉でんぷんの形状」の図を貼込んであるのもそういう意味から見て面白い。
子規の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
早い萱草かんぞうやつめくさのにはもう黄金きんいろのちいさな澱粉でんぷんつぶがつうつういたりしずんだりしています。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
砂糖さとう澱粉でんぷんといふような含水炭素がんすいたんそとよぶ養分ようぶんつくり、それをからえだへ、えだからみきくだつておくつて、木全體きぜんたい發育はついくのための養分ようぶんにし、そののこりはたくはへておきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
これに馬鈴薯ばれいしょ澱粉でんぷんを加えて一週間二キログラムの割合をもって給付することに決定したのである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
それから、友だちといっしょに、雪の上をおどるようにして、むこうへ行ってしまいました。すると、まるで澱粉でんぷんの上でも歩いているように、足の下で、雪がギシギシ鳴りました。
先ず霜柱は土にしか立たないものか、他の適当な粉に適当に水分を含ませたらそれでも出来るかを見るために、紅殻ベンガラの粉、澱粉でんぷん類、ガラスをくだいた粉などを用いて実験がしてある。
「霜柱の研究」について (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
第一に歯の咀嚼そしゃくを受け、唾液にて澱粉でんぷんを糖分に変化せしめられ、胃に入りて胃筋の機械的作用と胃液の化学作用を受け、それより小腸に入りて腸液と膵液すいえきと胆汁の消化作用を受け
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。濁って濁って、そのうちに、だんだん澱粉でんぷんが下に沈み、少しずつ上澄うわずみが出来て、やっと疲れて眼がさめる。朝は、なんだか、しらじらしい。
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
カネ 葛の粉をカネまたはカンネという土地は弘く、九州は一般に葛をカンネカズラというようであるが、果してこの一種に限るか、または根塊こんかい類の澱粉でんぷんをすべてカネというのかは問題である。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大伴家持作、堅香子かたかご草の花をぢ折る歌一首という題詞がある。堅香子は山慈姑かたくりで薄紫の花咲き、根から澱粉でんぷんの上品を得る。寺に泉のくところがあって、そのほとりに堅香子の花が咲いている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そして地中で養分をたくわえている役目をしているから、それで多肉たにくとなり、多量の澱粉でんぷんを含んでいる御蔵おくらをなしているが、それを人が食用とするのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
そこで、澱粉でんぷん脂肪しぼう蛋白質たんぱくしつと、この成分の大事なことはよくおわかりになったでしょう。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
脂肪蛋白澱粉でんぷん甘酸辛鹹かんさんしんかん、という風にプログラム的に編成されているが、どれもこれもちょっぴりで、しかもどれを食ってもまずくて、からだのたしになりそうなものは一つもない。
ちょうど今まで無用視された副腎ふくじん澱粉でんぷん消化の大効用ありと知られたようなものだ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この地下茎ちかけいせば食用にするにるとのこと、また地方によりこれから澱粉でんぷんってしょくしているところがある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
今の世はしきりに体育論と智育論とのあらそいがあるけれどもそれはほど加減かげんによるので、智育と体育と徳育の三つは蛋白質たんぱくしつ脂肪しぼう澱粉でんぷんのように程や加減を測って配合しなければならん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし『道徳教』でも『論語』でもコーランでも結局はわれわれの智恵を養う蛋白質たんぱくしつや脂肪や澱粉でんぷんである。たまたま腐った蛋白を喰って中毒した人があったからと云って蛋白質を厳禁すれば衰弱する。
変った話 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
小山「今の問題にイーストで製したパンは何故なにゆえ消化きやとあるね」中川「ウム、イーストは醗酵性はっこうせいのものでチャスターゼを含むから澱粉でんぷんの消化を助けるのと膨脹ぼうちょうしているからよく胃液を ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人は決して澱粉でんぷん蛋白たんぱく脂肪しぼうだけで生きて行かれるものではない。ヴィタミンが必要である。ヴィタミンだけでは生きて行かれないが、しかしヴィタミンを欠いだ栄養は壊血病を起こし脚気症かっけしょうを誘発する。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
含水炭素とは澱粉でんぷん、糖分、糊精こせい等にてこれもまた体力と体温とを生ず。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)