淡泊あつさり)” の例文
眼は大きく黒くて、二重瞼の二重顎ダブルジヤーの福々しい女。その眉の形と云へば全く話に出来ぬ程美しい曲線だ。頬に赤みがあつて淡泊あつさりとした女である。
いけ菖蒲あやめかきつばたのかゞみうつはな二本ふたもとゆかりのいろうすむらさきかむらさきならぬ白元結しろもとゆひきつてはなせし文金ぶんきん高髷たかまげこのみはおな丈長たけながさくらもやう淡泊あつさりとしていろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唐桟たうざん揃ひの淡泊あつさりづくりに住吉張の銀煙管おとなしきは、職人らしき侠気きほひの風の言語ものいひ挙動そぶりに見えながら毫末すこし下卑げびぬ上品だち、いづれ親方〻〻と多くのものに立らるゝ棟梁株とは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この婆さんを下宿の主人夫婦が大切にする事は日本の美しいと云はれる家庭でも余り見受けない程である。三度の食事が婆さんが来た為に一度増して午後五時頃に簡単な淡泊あつさりした食事が婆さんに出る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ひんのよき高髷たかまげにおがけは櫻色さくらいろかさねたるしろ丈長たけなが平打ひらうち銀簪ぎんかんひと淡泊あつさりあそばして學校がくかうがよひのお姿すがたいまのこりて、何時いつもとのやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細こゝろぼそ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
晩に馳走があるから昼は淡泊あつさり済まして置くんだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
淡泊あつさり仕舞しまふて殊更ことさら土産みやげをり調とゝのへさせ、ともには冷評ひようばん言葉ことばきながら、一人ひとりわかれてとぼ/\と本郷ほんごう附木店つけぎだな我家わがやもどるに、格子戸こうしどにはしまりもなくして、うへへあがるに燈火ともしびはもとよりのこと
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平打の銀簪ぎんかん一つ淡泊あつさりと遊して學校がよひのお姿今も目に殘りて、何時舊のやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細し、植村さまも好いお方であつたものをとお倉の言へば、何があの色の黒い無骨らしきお方
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
黄八丈のそでの長き書生羽織めして、品のよき高髷たかまげにお根がけは桜色を重ねたる白の丈長たけなが平打ひらうち銀簪ぎんかん一つ淡泊あつさりと遊して学校がよひのお姿今も目に残りて、何時いつもとのやうに御平癒おなほりあそばすやらと心細し
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)