此節このせつ)” の例文
人間様の方は賄賂が効くさうだが、俺達の方ぢやアとても駄目だよ。握飯で騙されるやうな半間はんまな犬が此節このせつがら有るものか。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
しか此節このせつ門並かどなみ道具屋だうぐやさんがふえまして、斯様かやうしなだれ見向みむきもしないやうになりましたから、全然まるでがないやうなもんでげす、うもひど下落げらくをしたもんで。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでもなか/\捗取はかどらず、七日なぬかつたので、あとのこつて附添つきそつて兄者人あにじやひと丁度ちやうど苅入かりいれで、此節このせつが八ほんしいほどいそがしい、お天気てんき模様もやうあめのやう、長雨ながあめにでもなりますと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
して跡先に聞し故分らぬはず夫なら此方の旦那清兵衞と云は私しの兄なるが此節このせつ大病たいびやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あなたのおっしゃる遊女や役者や道中絵を描くのは、泰平の世の浮世絵師、——女子供の慰みにする気はなくとも、世の中に事が無いと自然絵までが穏かになりますが、此節このせつのように
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
左様そうかい、そんな事を言うのかい。此節このせつの娘は生意気で困る」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此節このせつじやもうたゞへんきのこだ、めういぬしゝ王様わうさまだと、をかしいばかりである、おもしろいばかりである、つまらないばかりである、ツともないばかりである、馬鹿ばか々々しいばかりである
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「お駒さん、余計な事は言わない、此境内からたった一ト足出て、此節このせつの江戸の街を見てくれ、両に二斗の米(米価は此時百文に二合八勺まであがりました)が食えるものか食えねえものか」
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
扨も幸手宿の三五郎は藤澤宿の大津屋方へ度々たび/\金の無心に來りし故に此節このせつは段右衞門も厭倦果あぐみはてて居たりしが又或時三五郎來り我等われら此節このせつ不仕合ふしあはせ打續うちつゞことほかこまるにより金子三十兩かしくれよと頼みけるに段右衞門も當惑たうわくの體にて我此家へ入夫に參りてやうやく一年ばかりなれば勿々なか/\然樣さやうに金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
話しなば得心とくしんも致す可きかなれども其品は今十五兩と廿兩見せねば出來難きゆゑ貴殿十五兩才覺さいかくし給へ夫にてあつらへ主の方は片付かたづけべしと云ふに勘兵衞此節このせつは三兩とても出來難しとて請付うけつけねば彦兵衞も餘りの事に思ひ夫にては是非に及ばず御公儀次第と挨拶にぞ及びける茲に勘兵衞の妻お貞は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)