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此娘
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このむすめ
『
來たら
宜しく
被仰て
下さい、』と
僕が
眞實にしないので
娘は
默つて
唯だ
笑つて
居た。お
絹は
此娘と
從姉妹なのである。
さればこそ
一たび
見たるは
先づ
驚かれ
再び
見たるは
頭やましく
駿河臺の
杏雲堂に
其頃腦病患者の
多かりしこと
一つに
此娘が
原因とは
商人のする
掛直なるべけれど
兎に
角其美は
爭はれず
送りける故
平常心安き
得意に付
早速奧へ
請じ
種々饗應なしけるが此の家の娘におもせといふは
今年十六歳にして
器量も十人並に
勝れし故文右衞門は年若にて未だ妻もなき身なれば
不※此娘に
執心なし
竊に文を
夜もすがら
枕近くにありて
悄然とせし
老人二人の
面やう、
何處やら
寢顏に
似た
處のあるやうなるは、
此娘の
若も
父母にてはなきか、
彼のそゝくさ
男を
始めとして
女中ども一
同旦那樣御新造樣と
言へば