植木鉢うえきばち)” の例文
四人の雑役夫が植木鉢うえきばちをかかえて来た時に、花好きな老看守はそっちの方へ行ってしまい、ついに絶好のその機会が来たと思われた。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
もしそうしなかったら、それこそ植木鉢うえきばちにはえたちいさな草を引っこ抜くように、おまえたちの首を、引っこ抜いてしまうぞ。
そこには、このおとうさんの大事だいじになされているゆずの植木鉢うえきばちが、いてあって、しかもたった一つおおきいが、えだになっていたのであります。
ゆずの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まず映画に現われたのは一つの小さな植木鉢うえきばちであった。そのまん中の土が妙に動くと思っていると、すうと二葉が出て来た。
春六題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この家には表と裏の塀際へいぎわ植木鉢うえきばちが置けるくらいな空地が取ってあるだけで、庭と呼べるようなものは附いていない。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
敷き布のことと、屋根裏から植木鉢うえきばちを一つ往来に落としたというだけで、百フランの罰金を政府おかみから取られたんですよ。あまりひどいではありませんか。
縁側には、七輪や、馬穴バケツや、ゆきひらや、あわび植木鉢うえきばちや、座敷ざしきは六じょうで、押入れもなければとこもない。これが私達三人の落ちついた二階借りの部屋の風景である。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そこには少し引っ込んだ所に、不断は植木鉢うえきばちほうきでも入れてありそうな、小さい物置があった。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夫人は立ちながら、それをめた。そうして彼女を案内した看護婦の両手に、抱えるようにして持たせた植木鉢うえきばちをちょっとふり返って見て、「どこへ置きましょう」と相談するようにいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
植木鉢うえきばちをいじる人は花鋏はなばさみの人よりもはるかに人情がある。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
「おじいさまは、きていらっしゃるのだろうか。」と、正二しょうじみみをすましていると、たなのうえ植木鉢うえきばちろして、いえうちれているようすでした。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小供の時から、こんなに教育されるから、いやにひねっこびた、植木鉢うえきばちかえでみたような小人しょうじんが出来るんだ。無邪気むじゃきならいっしょに笑ってもいいが、こりゃなんだ。小供のくせおつに毒気を持ってる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
正二しょうじは、勝手かってもとへいって、なが物干ものほしざおをって、うらほうへまわりました。にわにはごろから、おじいさんの大事だいじにしている植木鉢うえきばちが、たなのうえならべてありました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「この植木鉢うえきばちも、っていってくださいませんか。」と、おかみさんらしいひとがいいました。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、おじいさんの大事だいじにしている植木鉢うえきばちなどに一だってさわったことはありません
すずめの巣 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正二しょうじは、ながら、いろいろあった植木鉢うえきばちのことなどかんがえました。「うめか、それともまつかな。」そんなことを空想くうそうしているうちに、いつかまたぐっすりと眠入ねいってしまいました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうさんの、大事だいじになさっている植木鉢うえきばちのゆずが、今年ことしおおきなを二つつけました。
ゆずの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あいつが、植木鉢うえきばち小便しょうべんをかけたし、いつかくつが片方かたほうくなったのも、きっとあいつがどこかへくわえていったのだ。」と、叔父おじは、こたえたが、なんの理由りゆうもつけずにいじめるのは
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)