)” の例文
鎌をいてその上に腕をくみ合せ、何処を見るともなくきょとんとした眼つきをして、はてしもなく種々いろいろなことを思いだしていた。
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
この両側左右の背後に、浄名居士じょうみょうこじと、仏陀波利ぶっだはりひとつ払子ほっすを振り、ひとつ錫杖しゃくじょう一軸いちじくを結んだのを肩にかつぐようにいて立つ。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きたまえる矛を王宮の門に立て、占領の証とし、平和条約を結び、毎年金、銀、彩色、綾羅、絹縑等を船八十艘に積んで貢物とすべく約した。
日本上古の硬外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
演壇の右側には一警視の剣をきて、弁士の横顔穴も穿けよとにらみつゝあり、三名の巡査はして速記に忙殺ばうさつせらる
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「奴隷と云われても耻とも思わんような、犬……犬……犬猫同前な奴に手をいて頼めと仰しゃるのですか」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ける矛を樹てゝ来られた(紀)といふのも、刄物のついた槍の類ではなく、神祭りの幡桙であつた事は、奈良の都になつて、神祭りに関係ありさうな杠谷樹ヒヽラギの八尋桙根が
幣束から旗さし物へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
棒をいた商人ていの不思議な人物のみは、自分が検査役かの如き気取りで、平然としてもとの立場を動かず、そのくせ、両陣の争いはいよいよその身に近くなってきています。
菊五郎の松王丸、「やれたれよ玄蕃殿」と声かけ駕籠かごより出で、左手に刀をき、下手の床几しょうぎにかかり「助けて返す」にて咳入り「つら改めて」にて右手を懐に入れ、後へ体をのしてきまる。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
權「困った奴だ、何うかして歩け、此の棒をけ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
筋向すじむかいの垣根かきねきわに、こなたを待ち受けたものらしい、くわいて立って、莞爾にこついて、のっそりと親仁おやじあり。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自身も恐らくは無理と知りつつ無理をならべて一人で立腹して、また一人で立腹したとてまた一人で立腹して、罪もとがも無い文三に手をかして謝罪わびさしたので有ろう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あの方が壮盛わかざかりに、棒術をこのんで、今にも事あれかしと謂った顔で、立派なよろいをつけて、のっしのっしと長い物をいて歩かれたお姿が、あれを見ていて、ちらつくようだなど
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
槍をいて来たのは机竜之助で
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何かに紛れてランプ配りがおそくなった時などは、もう夕闇が隅々へ行渡って薄暗くなった此の部屋の中に、机に茫然ぼんやり頬杖をいてる雪江さんの眼鼻の定かならぬ顔が、唯円々まるまる微白ほのじろく見える。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さう言へばあの方が壮盛わかざかりに、矛使ほこゆけをこのんで、今にも事あれかしと謂つた顔で、立派なよろひをつけて、のつし/\と長い物をいて歩いたお姿が、ちらつくやうだなどゝ、相槌をうつ者も出て来た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
うぬら見送っても命がないぞと、近寄ったのを五、六人、蹴散らして、ぱっと退く中を、と抜けると、岩を飛び、岩を飛び、岩を飛んで、やがて槍をいて岩角いわかどに隠れて、それなりけりというので
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今更手をいて一ちゃくする事は、文三には死しても出来ぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)