にな)” の例文
新字:
しかもジリリと心にかぶさつてくる生くわつ問題もんだいの重あつを一方にになひながら、むしろより悲壯ひそうたゝかひをたゝかつてゐると見られぬ事はない。
數多あまたの人にまさりて、君の御覺おんおぼえ殊にめでたく、一族のほまれを雙の肩にになうて、家には其子を杖なる年老いたる親御おやごもありと聞く。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いま海底戰鬪艇かいていせんとうてい成敗せいばい一身いつしんになへる貴下きか身命しんめいは、吾等われら身命しんめいして、幾十倍いくじふばい日本帝國につぽんていこくため愛惜あいせきすべきものなり。
此の相續人になツた資格のうらには、種馬たねうまといふ義務ぎむになはせられてゐた。それで彼が甘三四と]なると、もう其の候補者こうほじやまでこしらへて、結婚をまられた。無論周三は、此の要求を峻拒した。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
利安等は四十八歳になつた孝高の妻櫛橋氏くしばしうぢと、十六歳になつた長政の妻保科氏とを俵にくるんで、しかかごと云ふものに入れ、浴室の壁の下を穿うがつて持ち出し、商人に粧つた友信にになはせて
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
時頼が六尺の體によくもになひしと自らすら駭く計りなる積り/\し憂事うきことの數、我ならで外に知る人もなく、只〻戀の奴よ、心弱き者よと世上せじやうの人に歌はれん殘念さ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ふとまなこつたのは、いまこのふね責任せきにん双肩さうけんになへる船長せんちやうが、卑劣ひれつにも此時このとき舷燈げんとうひかり朦朧もうろうたるほとりより、てんさけび、ける、幾百いくひやく乘組人のりくみにんをば此處ここ見捨みすてゝ
女は戀人として男に苦痛を與へると同時に歡樂くわんらくを與へるけれども、妻としては所天をつと何等なんらの滿足も與へぬ、與へたとしてもそれは交換的で、しかも重い責任をになはせられやうといふものだから
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
同じ哀れを身にになうて、そを語らふ折もなく、世を隔て樣を異にして此の悲しむべき對面あらんとは、そも又何のごふ、何の報ありてぞ。我は世に救ひを得て、御身はきに心をやぶりぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)