成立なりたち)” の例文
しかし「武鑑」の成立なりたちを考えて見れば、この誤謬の多いのは当然で、それはまた他書によってただすことが容易である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
安く送らん事最々いと/\容易よういわざながら忠相ぬしつら/\かれを見るに貴介きかい公子こうし落胤らくいん似氣にげなく奸佞かんねい面に顯れ居ればこゝろゆるせぬ曲者くせものなりと夫が成立なりたちよりの事柄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちぎりはふか祖先そせんえんかれてかし一人子同志ひとりこどうし、いひなづけのやく成立なりたちしはおたかがみどりの振分髮ふりわけがみをお煙草盆たばこぼんにゆひむるころなりしとか、さりとてはながかりし年月としつき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
詐偽も糞もあるもんか。商人は儲けさへすりやア些と位人に迷惑を掛けてもかまはんのだ。今の大頭株あほあたまかぶを見給へ、紳商面をして澄ましてやがるが、成立なりたち悉皆みんな僕等と仝じ事だ。
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
あっしは早晩洋服屋って商売は駄目になると思うね。羅紗らしゃ屋と裁縫師、その間に洋服屋なんて云う商人とも職工ともつかぬ、不思議な商売の成立なりたちを許さない時期が、今にきっと来ると思いますね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その惡事あくじたとへば殺人罪さつじんざいごと惡事あくじ意味いみもなく、原因げんいんきものとふをべきや、これ心理的しんりてき解剖かいぼうして仔細しさいその罪惡ざいあく成立なりたちいたるまでの道程みちのりゑがきたる一書いつしよ淺薄せんはくなりとしてしりぞくることべきや。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
『法苑珠林』五三に竜樹の成立なりたちを述べて、〈南天竺国、梵志の種の大豪貴の家に出づ、云々。弱冠にして名を馳せ、ほしいままに諸国を歩み、天文地理、星緯図讖としん、および余の道術、綜練せざるは無し。
この通りで慶應義塾の成立なりたちは、教師の人々がこの塾を自分のものと思うて勉強したからの事です。決して私一人の力に叶う事ではない。人間万事余り世話をせずに放任主義の方が宜いかと思われます。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
吉野の遊の成立なりたちを明にせむがために、わたくしは先づ游稿の文を節録する。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)