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自分すら忘れきつた彼の人の出来あがらない心に、骨に沁み、干からびた髄のしんまでも、唯りつけられるやうになつて残つてゐる。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
法諡はふしして徳源院譲誉礼仕政義居士と云ふ。墓は新光明寺にあつて、「明治三十五年七月建伊沢家施主八幡祐観やはたいうくわん」とつてある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ダンテが敍事の生けるが如きために、其さま深くも我心にりつけられたるにや、晝は我念頭に上り、夜は我夢中に入りぬ。
葷酒不許入山門と石にらし寺の住持は銭好むらし(氷谷博士の墓地、約束後また値上げされし由を聞きて)
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
かゝる時、はからず目に入つた光景は深く脳底にり込まれて多年これを忘れないものである。余が今しも車窓より眺むる処の雲の去来ゆきゝや、かばの林や恰度ちやうどそれであつた。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その光被するところ、べてを化石となす、こゝろみに我が手をぐるに、あきらけきこと寒水石をり成したる如し、我が立てる劒ヶ峰より一歩の下、窈然えうぜんとして内院の大窖たいかうあり、むかし火をきたるところ
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
」の歌は象牙にけづり、「よる」の歌は黒檀に
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
げいの日照らす宮居みやゐりちりばめ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
侘禅師わびぜんじから鮭に白頭の吟を
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
龍頭りゆうづりたるつるぎ太刀だち
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
壽阿彌は西村氏の菩提所昌林院に葬られたが、親戚が其名を生家の江間氏の菩提所にとゞめむがために、此墓にり添へさせたものであらう。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
戸より入りて見れば、新に大理石もてり成せる大いなる馬二頭地上に据ゑられ、青艸あをくさはほしいまゝに長じて趺石ふせきを掩はんと欲す。四邊あたりには既に刻める柱頭あり、あらごなししたる石塊あり。
」の歌は象牙にけづり、「よる」の歌は黒檀に
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
少女をとめりてうかび出づ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
瞳子ひとみられぬ唐獅子は
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
正宗院は幾勢が薙染後ちせんごの名である。ちなみに云ふ。幾勢の墓には俗名世代せよつてある。世代は恐くは黒田家の奥に仕へた時の呼名であつただらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
版には土地ところの習にて、梟せられたるものゝ氏名と其罪科とをりたり。果せるかな、中央に老女フルヰア、フラスカアチの産と記せり。われはいたく感動して、覺えず歩み退しりぞくこと二三歩なりき。
つくづく見入る眼差まなざしは、たくみりし像の眼か
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
浅草新光明寺に「先祖代々之墓、伊沢主水源政武もんどみなもとのまさたけ」とつた墓石がある。此主水の建てたものではなからうか。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つくづく見入る眼差まなざしは、たくみりし像の眼か
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
光照院の墓地の東南隅に、殆ど正方形を成した扁石ひらいしの墓があつて、それに十四人の戒名が一列にり付けてある。其中三人だけは後に追加したものである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
黒檀のつちをもて天空てんくうりきざむ時
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
臺石には金澤屋とり、墓には正面から向つて左の面に及んで、許多あまたの戒名が列記してある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
これのみは余りに深く我心にりつけられたればさはあらじと思へど、今宵はあたりに人も無し、房奴ばうどの来て電気線の鍵をひねるには猶程もあるべければ、いで、その概略を文に綴りて見む。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)