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引幕
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ひきまく
ふりがな文庫
“
引幕
(
ひきまく
)” の例文
横手の
桟敷裏
(
さじきうら
)
から
斜
(
ななめ
)
に
引幕
(
ひきまく
)
の一方にさし込む
夕陽
(
ゆうひ
)
の光が、その進み入る道筋だけ、空中に
漂
(
ただよ
)
う塵と煙草の煙をばありありと眼に見せる。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
なにかの参考のために、その当時、かの外国人らが
引幕
(
ひきまく
)
に添えて守田勘弥に送った書面を左にかかげる。原文はもちろん英文で、それに日本語の訳文を添えたものである。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ある日
特
(
こと
)
に
小介
(
こもの
)
をして大きなる新調の
引幕
(
ひきまく
)
を持ち来らしめ、こは自分が自由民権の大義を講演する時に限りて用うべき幕なれば、何とぞわが敬慕する
尊姉
(
そんし
)
の名を記入されたく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
二絃琴を
拡
(
ひろ
)
めようとする気持ちと、おしょさんの派手ずきとから、
引幕
(
ひきまく
)
を贈ることもあった。藤の花の下に
緋
(
ひ
)
の敷もの、二絃琴を描いてあとは
地紙
(
じがみ
)
ぢらしにして名とりの名を書いたりした。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
横手
(
よこて
)
の
桟敷裏
(
さじきうら
)
から
斜
(
なゝめ
)
に
引幕
(
ひきまく
)
の
一方
(
いつぱう
)
にさし込む
夕陽
(
ゆふひ
)
の光が、
其
(
そ
)
の進み入る
道筋
(
みちすぢ
)
だけ、空中に
漂
(
たゞよ
)
ふ
塵
(
ちり
)
と
煙草
(
たばこ
)
の
煙
(
けむり
)
をばあり/\と眼に見せる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
記念のためにどうか
引幕
(
ひきまく
)
を頂戴することは出来まいかと言った。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
長吉
(
ちやうきち
)
はこの
夕陽
(
ゆふひ
)
の光をば
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ事なく悲しく感じながら、
折々
(
をり/\
)
吹込
(
ふきこ
)
む外の
風
(
かぜ
)
が大きな波を
打
(
うた
)
せる
引幕
(
ひきまく
)
の上を
眺
(
なが
)
めた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
引幕
(
ひきまく
)
には
市川
(
いちかは
)
○○
丈
(
ぢやう
)
へ、浅草公園
芸妓連中
(
げいぎれんぢゆう
)
として
幾人
(
いくたり
)
となく
書連
(
かきつら
)
ねた芸者の名が読まれた。
暫
(
しばら
)
くして
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
拍子木
(
ひょうしぎ
)
の
音
(
おと
)
と
幕明
(
まくあき
)
の
唄
(
うた
)
とに伴ひて
引幕
(
ひきまく
)
の波打ちつつあき行く瞬間の感覚、独吟の唄一トくさり
聴
(
き
)
きて役者の
花道
(
はなみち
)
へ
出
(
いづ
)
る時、あるひは
徐
(
おもむ
)
ろに
囃子
(
はやし
)
の
鳴物
(
なりもの
)
に送られて
動行
(
うごきゆ
)
く
廻舞台
(
まわりぶたい
)
を見送る時
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
電車の
馳
(
は
)
せ行く
麹町
(
こうじまち
)
の大通りには、
松竹
(
まつたけ
)
の
注目飾
(
しめかざ
)
り、
鬼灯提灯
(
ほおずきちょうちん
)
、
引幕
(
ひきまく
)
、
高張
(
たかはり
)
、
幟
(
のぼり
)
や旗のさまざまが、
汚
(
よご
)
れた
瓦
(
かわら
)
屋根と、新築した家の
生々
(
なまなま
)
しい木の板とに対照して、少しの調和もない混乱をば
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
浮雲の
引幕
(
ひきまく
)
から屈折して落ちて来る
薄明
(
うすあかる
)
い光線は
黄昏
(
たそがれ
)
の如く
軟
(
やわらか
)
いので、
眩
(
まばゆ
)
く照り輝く日の光では見る事
味
(
あじわ
)
う事の出来ない物の
陰影
(
かげ
)
と物の
色彩
(
いろ
)
までが、かえって鮮明に
見透
(
みとお
)
されるように思われます。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
“引幕”の解説
引幕(ひきまく)とは、舞台などで、左右に引いて開閉する幕のこと。歌舞伎の定式幕もまた、引幕の一種である。
歌舞伎舞台の正面には少し裾を引いた幕が垂れ下がっており、これが右手に引かれると芝居が始まり、左手に閉じると芝居が終わることを意味していた。これが引幕であり、歌舞伎狂言ではこの幕がことのほか尊ばれ、明治初年に引幕の使用が認められていたのは東京で10座に限られていたという。引幕のうち三色に彩色したものを特に定式幕という。
(出典:Wikipedia)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
幕
常用漢字
小6
部首:⼱
13画
“引”で始まる語句
引
引込
引摺
引返
引張
引掛
引籠
引立
引緊
引出