ぴろ)” の例文
旧字:
だだっぴろいその客車には外務省の夜会に行くらしい三人の外国人が銘々、デコルテーを着飾った婦人を介抱して乗っているだけだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
帰るたびに入りつけた料理屋へついて、だだっぴろい石畳の入口から、庭の飛石を伝っていくと、そこに時代のついた庭に向いて、古びた部屋があった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
唯顔だちから云ふと、此女の方が余程上等である。口に締りがある。眼が判明はつきりしてゐる。ひたひが御光さんの様にだゞつぴろくない。何となくい心持に出来上つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
新「何うするたって暑ッ苦しいよ、今友達を連れて来たが、狭いうちにだゞっぴろい大きな蚊帳を引摺り引廻ひんまアして、風が這入らねえのか、暑くって仕様がねえから取るのだ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仏天青フォー・テンチンも、人々のうしろから、柵の中にはいった。狭いくだざかを、ついていくと、やがて、電灯のついただだっぴろい部屋が見えた。ぷーんとえくさい空気が、彼の鼻をうった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御緩ごゆつくさまで、』と左側ひだりがはの、たゝみ五十畳ごじふでふばかりの、だゞつぴろ帳場ちやうば、……真中まんなかおほきつた、自在留じざいとめの、ト尾鰭をひれねたこひかげから、でつぷりふとつたあかがほして亭主ていしゆふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて、その長屋門をはひると、だだぴろい中庭の右側に、長屋のやうに見える六畳ぐらゐの部屋がよつつほど並んでゐて、その外側に、四つの部屋に共通する、長い広い縁側がついてゐた。
だから、ただ駄々だだぴろい感じばかりで、畳の上でもまるで野原へ出たとしきゃあ思えない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
無反むぞり小長こながいのをし、襠高まちだかはかまをだゞッぴろく穿き、大先生の様に思われますが、賭博打ばくちうちのお手伝でもしようという浪人者を二人連れて、宇治の里の下座敷で一口遣っていると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
帆村探偵は、そば小扉ことびらをあけて、小さな階段をコトコトとくだって行った。り切ったところが狭い廊下になっていて、そこにだだっぴろへやがある。そこは、この建物にいる皆の寝室だった。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おりからじめじめと降りつづいている五月雨さみだれに、廊下には夜明けからの薄暗さがそのまま残っていた。白衣を着た看護婦が暗いだだっぴろい廊下を、上草履うわぞうりの大きな音をさせながら案内に立った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「困るでねえか、そうした事店頭みせさきでおっぴろげて」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)