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はたんきょう
ふりがな文庫
“
巴旦杏
(
はたんきょう
)” の例文
部屋の
中央
(
まんなか
)
の辺りに一基の朱塗りの
行燈
(
あんどん
)
が置いてあって、
熟
(
う
)
んだ
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のような色をした燈の光が、畳三枚ぐらいの間を照らしていた。
鸚鵡蔵代首伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お文はわざとそういう口をきく、奮闘したあとで酒がはいって、酔ってもいるらしい、白粉の
剥
(
は
)
げた頬が
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のように赤く光っていた。
寒橋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
やがてどことなく間のぬけたような笑いを見せながら「砂糖漬けのオレンジを二つと
巴旦杏
(
はたんきょう
)
を二つと、砂糖のついた栗を二つ」
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
その左右の青々とした、新しい
四目垣
(
よつめがき
)
の内外には邸内一面の
巴旦杏
(
はたんきょう
)
と白桃と、梨の花が、雪のように散りこぼれている。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のやうに、ぷつくりふくれた小さな唇を、なかば開いたまま、そこからかすかな寝息を出し入れしてゐる。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
▼ もっと見る
ところでそこにきれいなきれいな赤
薔薇
(
ばら
)
の色をした小さい花がさいて
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のようなにおいをさせていました。
真夏の夢
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
私は、病気で、
臥
(
ね
)
ていました。六つか、七つ頃のことです。昼ごろ、母は、使から帰って来ました。そしておみやげに、大きな
巴旦杏
(
はたんきょう
)
を枕許に置いてくれました。
果物の幻想
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
檐
(
のき
)
には
尾垂
(
おだれ
)
と竹の雨樋が取付けてあり、広い庭に
巴旦杏
(
はたんきょう
)
やジャボン、
仏手柑
(
ぶしゅかん
)
などの異木が植えられ、
袖垣
(
そでがき
)
の傍には
茉莉花
(
まつりか
)
や
薔薇花
(
いけのはな
)
などが見事な花を咲かせている。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
しかもドイツやロシアやスカンジナヴィアやフランスなど各国でできたもの——ビールやシャンパンや
巴旦杏
(
はたんきょう
)
酒や
葡萄
(
ぶどう
)
酒——を、彼らはすべて一気に飲み下した。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかし中で一番きれいなのは、やはりさっきハリイ男爵の踊り相手になった、あの子供らしい腕と、
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のような輪郭の眼をした、小さな小麦色の肌の女である。
ある幸福
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のようにかがやいていた少女たちの
頬
(
ほお
)
は、みているまに白くあせて、
眉
(
まゆ
)
はかなしみに
曇
(
くも
)
った。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その時、彼は自分の
袂
(
たもと
)
に入れていた
巴旦杏
(
はたんきょう
)
を取り出して、青い光沢のある色も甘そうに熟したやつを子供の手に握らせた。そして彼の隠宅の方へとその子供を連れて行った。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と云うのは、墓地樹として、典型的な、ななかまどや
枇杷
(
びわ
)
の
類
(
たぐい
)
がなく、
無花果
(
いちじく
)
・糸杉・
胡桃
(
くるみ
)
・
合歓樹
(
ねむのき
)
・
桃葉珊瑚
(
あおき
)
・
巴旦杏
(
はたんきょう
)
・
水蝋木犀
(
いぼたのき
)
の七本が、別図のような位置で配置されていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「わしがサレーダイン公爵だ」老人は
巴旦杏
(
はたんきょう
)
をもりもりと頬張りながら云った。
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
羅馬
(
ロオマ
)
の
大本山
(
だいほんざん
)
、リスポアの港、
羅面琴
(
ラベイカ
)
の
音
(
ね
)
、
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の味、「
御主
(
おんあるじ
)
、わがアニマ(霊魂)の鏡」の歌——そう云う思い出はいつのまにか、この
紅毛
(
こうもう
)
の
沙門
(
しゃもん
)
の心へ、
懐郷
(
かいきょう
)
の悲しみを運んで来た。
神神の微笑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
芥川龍之介氏の句に「漢口」という前書で「一
籃
(
かご
)
の暑さてりけり
巴旦杏
(
はたんきょう
)
」
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
一日
(
あるひ
)
、
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の実の青々した二階の窓際で、涼しそうに、うとうと、一人が寝ると、一人も眠った。貴婦人は神通川の方を裾で、お綾の方は立山の
方
(
かた
)
を枕で、互違いに、つい
肱枕
(
ひじまくら
)
をしたんですね。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自然は
衒
(
てら
)
わず、無理がない。自然はあせらず、
懼
(
おそ
)
れない。枝が柔らかくなって葉が芽ぐめば、夏の近きことを知るではないか。エレミヤは
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の枝が花をつけたのを見て、エホバの目覚めを知った。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
薬局の三方
硝子
(
ガラス
)
窓の外は雪のように輝やいていた。西に傾いて一段と冴え返った満月に眩しく照らされた
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の花が、鉛色の影を大地一面に
漂
(
ただよ
)
わしていた。
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の熟したような色であった。女はじっとその鬼あざみを見て、華やかに笑ったのである。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と、ややあつて
訊
(
き
)
く。姫は
巴旦杏
(
はたんきょう
)
のやうに肉づいた丸い
脣
(
くちびる
)
を、物言ひたげに
綻
(
ほころ
)
ばせたが、思ひ返したのかそのままに無言で
点頭
(
うなず
)
いた。アスカムは窓に満ちる
春霞
(
はるがすみ
)
の空へと眼を転ずる。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
すらりとした長身で、ぬけるように肌が白く、上気して、頬が
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の色に赧らんでいる。
真鍮
(
しんちゅう
)
色の眉の下に、液体の中で泳いでいるかと思うような、
睫毛
(
まつげ
)
の長い
淡色
(
うすいろ
)
の美しい眼がある。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あるものは子供の時分、本陣の裏庭へ
巴旦杏
(
はたんきょう
)
を盗みに忍び入って、うしろからうんと一つどやしつけられたが、その人がお師匠さまであったことは今だに忘れられないとの話をはじめる。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
濡れた唇と分厚な鼻と
巴旦杏
(
はたんきょう
)
形の黒い眼と、その眼の上に弓なりにかかっている濃い柔かい眉とがあるので、彼女に少くともある程度まで、ユダヤ種のあることは疑う余地がなかったけれど
幸福への意志
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
妹には珍らしくすなおな筆つきで書き
記
(
しる
)
してある、——できるだけ注意したとは書いたが、正直に云うと自分が悪かったのである、良人に禁じられていた
巴旦杏
(
はたんきょう
)
を、せがまれるままに喰べ過ごさせた
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
巴
漢検準1級
部首:⼰
4画
旦
常用漢字
中学
部首:⽇
5画
杏
漢検準1級
部首:⽊
7画
“巴旦杏”で始まる語句
巴旦杏型