宜敷よろしく)” の例文
御尤ごもつともです——いや、それではいづれ後刻御目に懸つて、御礼を申上げるといふことにしませう。何卒どうか皆さんへも宜敷よろしく仰つて下さい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『あゝ然ですか。何れ宜敷よろしく御盡力下さい。後藤君が此函館に來たについちや、何しろ僕等先住者が充分盡すべき義務があるんですからね。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
長「何をいうのだ、それじゃア明日は屹度往きますから宜敷よろしく、左様なら、姉さん、あの小僧さんを宜く知っておいでゞすね」
菊池君が脚色してくれるのは結構だがしかしこれもあらかじめ会見して意志を疎通して置く必要がある、その辺のこと宜敷よろしく頼むということを伝えた
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
致して居しがまづ重疊ちようでふ左樣さやう御座らば立歸りよろこばせし上又あらためて出まする事に仕つれば何分なにぶん宜敷よろしくお頼申すとよろこびをのべわかれを告取散とりちらせし辨當など始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
右の御褒美の中に「平日の心掛宜敷よろしく」「暮し向万事質素」「門弟引立方深切」云々という事実は筆者等が翁の晩年に於ても親しく実見したところで
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
父よりいずれ御礼の文奉り度存居ぞんじおり候えども今日は町の市日いちびにて手引き難く、乍失礼しつれいながら私より宜敷よろしく御礼申上候
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
御紹介する右は小生しょうせいの同県人にて小生とは年来親しくしている人なり君の会社に勤めつつある某社員の身元にいて調べたい事項があるそうだから御面会の上宜敷よろしく御取計いを
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
此方こつちへと云ふ所にだいがある。四角な棒を四本立てて、其上を板で張つたものである。三四郎は台の上へ腰を掛けて初対面の挨拶をする。それから何分宜敷よろしく願ひますと云つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
富子さんは「それなら宜敷よろしく」とも言わないで友達の手を引張って帰って行ってしまった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
例の通りこの刑をおこないしが、その婦人の霊、護送者の家へ尋ね行き、今日こんにちは御主人にお手数てかずかけたり、御帰宅あらば宜敷よろしく云置いいおき、たちまち影を見失いぬ、妻不思議に思いいるところへ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
宜敷よろしく南洋無国家島へでも渡り、自由自在に自己の主義を唱導すべき也。
警戒すべき日本 (新字旧仮名) / 押川春浪(著)
尚々皆様へ宜敷よろしく御願申候也。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その手紙には、自分は今旅舎やどや住居ずまいの境遇であるから、式に出ることだけは見合せる、万事兄上の方で宜敷よろしく、三吉にも宜敷、としてあった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
聞如何我たねなればとて然る曲者くせもの採用さいようし後にがいをばのこさんこと武將ぶしやうの所爲に有ざれば天下の爲に彼をしてしひ僞者にせもの言詰いひつめ宜敷よろしくけいに行ふ可し是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『休暇で歸るのに見送りなんかて貰はなくつても可いと言つたのに、態々俥でやつて來てね。麥酒ビールや水菓子なんか車窓まどン中へはふり込んでくれた。皆樣に宜敷よろしくつて言つてたよ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
斯の気丈夫な内儀かみさんは、自分が死んだ後の後妻のことまでも心配して、御隠居さん始め、裁縫師にも宜敷よろしく頼むと言出した。
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ひそかまねき吉之助は古河こが一番の大盡だいじん息子むすこにて江戸のみせ遊藝稽古いうげいけいこの爲に參られ此處へは始めての事なれば隨分ずゐぶん宜敷よろしくはからひくれよ此後も度々連參つれまゐらんと内證を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「三吉さんのところへいらっしゃいましたら、俊や鶴のことを宜敷よろしく御願い申しますッて、そう仰って下さい……何卒どうか……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それぢや小常磐せうときはの方は宜敷よろしく頼んだよ。式が済んだら新夫婦に写真を撮らせて、たゞちに料理屋へ廻らせる。よし。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「皆さんに宜敷よろしく——実にも御無沙汰ごぶさたするがッて、宜敷言っておくれや——お前さんもまあ折角せっかく御無事で——」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今朝の客が尋ねて来たこと、宿は上町の扇屋にとつたとのこと、宜敷よろしくと言置いて出て行つたことなぞを話して、まだ外にでつぷり肥つた洋服姿の人も表に立つて居たと話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
校長は時刻をたがへず出勤したので、早速この報知しらせを話した。丑松は直にこれから出掛けて行きたいと話した。留守中何分宜敷よろしく、受持の授業のことは万事銀之助に頼んで置いたと話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)