媽々かかあ)” の例文
学位のある、立派な男が、大切な嫁をるのだ。念を入れんでどうするものか。しらべるのは当前あたりまえだ。芸者を媽々かかあにするんじゃない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
朱羅宇しゅらう長煙草ながぎせるで、片靨かたえくぼ煙草たばこを吹かしながら田舎の媽々かかあと、引解ひっときもののの掛引をしていたのをたと言う……その直後である……浜町の鳥料理。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっともね、居ると分ったら、門口かどぐちから引返ひっかえして、どこかで呼ぶんだっけ。媽々かかあ追掛おっかけるじゃないか。仕方なし奥へ入ったんだ。一間ひとましかありやしない。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねがいだ、お願だ。精霊大まごつきのところ、お馴染のわし媽々かかあ門札かどふだを願います、と燈籠を振廻ふりまわしたもんです。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人形使 されば、この土地の人たちはじめ、諸国から入込いりこんだ講中こうじゅうがな、ばば媽々かかあじい、孫、真黒まっくろで、とんとはや護摩ごまの煙が渦を巻いているような騒ぎだ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは、祖父じい何々院なになにいん、これは婆さまの何々信女なになにしんにょ、そこで、これへ、媽々かかあの戒名を、と父親おやじが燈籠を出した時。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ぜんから居る下役の媽々かかあども、いずれ夫人とか、何子とか云う奴等が、女同士、長官の細君の、年紀としの若いのをそねんだやつさ。下女に鼻薬を飼って讒言つげぐちをさせたんだね。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背戸で、蟹をうでるなら、浜の媽々かかあでありそうな処を、おかしい、とおんなどもも話したのですが。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たけなわなる汐時しおどき、まのよろしからざる処へ、田舎の媽々かかあ肩手拭かたてぬぐいで、引端折ひっぱしょりの蕎麦そばきり色、草刈籠くさかりかごのきりだめから、へぎ盆に取って、上客からずらりと席順に配って歩行あるいて
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
われらこのはげしき大都会の色彩をながむるもの、奥州辺の物語を読み、その地の婦人を想像するに、大方は安達あだちヶ原の婆々ばばあを想い、もっぺ穿きたるあねえをおもい、紺のふんどし媽々かかあをおもう。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おう、媽々かかあが出来たから、今日は内で飯を喰うんだ、道具を貸してくんねえ、)
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何をどうして可いんだか、おめえさん、みんな根こそぎたたき売れ、と云うけれど、そうは行かねえやね。蔦ちゃんが、手を突込んだ糠味噌なんざ、打棄うっちゃるのはおしいから、車屋の媽々かかあに遣りさ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
知ッてますよ、手習師匠兼業のやっこなんで、媽々かかあが西洋の音楽とやらを教えて、そのばばあがまた、小笠原礼法躾方しつけかた活花いけばな、茶の湯をあきなう、何でもごたごた娘子むすめッこすきな者を商法にするッていいます。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竜宮から小槌こづちを貰ったって、振ってもたたいても媽々かかあは出ねえ。本来ならずしに納めて、高い処に奉って、三度三度、お供物を取換とっかえて、日に一度だけ扉を開いて拝んでいなけりゃ罰が当ら。……
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死物狂いで、潰れかけた商会はけむにする、それがために媽々かかあは死ぬ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
且つ我が国の精神じゃ、すなわち武士道じゃ。人を救い、村を救うは、国家のためにつくすのじゃ。我が国のために尽すのじゃ。国のために尽すのに、一晩媽々かかあを牛にのせるのが、さほどまでなさけないか。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「米が高値たかいから不景気だ。媽々かかあめにまた叱られべいな。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
媽々かかあ連を追払おっぱらってくれ、消してくれよ、妖術、魔術で。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
可厭いや媽々かかあだな。」
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)